米ぬかには、不飽和ビタミンEトコトリエノールやフェルラ酸などの機能性成分が多く含まれている。我々はトコトリエノールによるテロメラーゼ阻害を世界に先駆けて発見し、癌に対するトコトリエノールの有用性を明らかにしてきた。また、米ぬか成分の新規機能性を調べる過程で、トコトリエノールのG1期停止を介した癌細胞増殖抑制作用をフェルラ酸が相乗的に高めることを初めて報告した。そこで平成31年度では、in vivo試験によってトコトリエノールとフェルラ酸の有効性を評価することで、米ぬか成分の高い抗癌活性を実証し、“米成分による癌抑制”の実現に挑むことを目的とした。 近年、癌の薬効評価への応用に注目を集めているスフェロイド(組織様構造体)に着目し、これを活用してトコトリエノールとフェルラ酸の相乗効果を検証した。膵臓癌細胞PANC-1からスフェロイドを作製し、培地にトコトリエノールを処理することでPANC-1の細胞増殖が抑制されることが確認できた。PANC-1のスフェロイドにトコトリエノールとフェルラ酸を同時処理すると、PANC-1の増殖が相乗的に阻害された。また、前年度に見出したフェニルプロパノイド類縁体であるコニフェリルアルコールやカフェ酸も同様に、トコトリエノールの癌抑制効果を強力に高めることがわかり、フェニルプロパノイド類縁体がトコトリエノールの癌抑制作用に高い効果を発揮することが明らかになった。現在、マウスを用いてこの相乗作用を評価している。
|