アミノ酸飢餓に対する細胞応答において、細菌Obgタンパク質ファミリーのヒトのホモローグであるObgH2(別名GTPBP10)が果たす役割、特にObgH2がアミノ酸欠乏を感知してタンパク質異化を制御しているかを検討した。 まず、ObgH2の細胞内局在を強制発現系で検討したところ、mycタグをN末端につないだmyc-ObgH2は核小体に局在し、mycタグをC末端につないだObgH2-mycはミトコンドリアに局在した。次に、ObgH2に対するウサギポリクローナル抗体を用いた免疫蛍光染色で検討したところ、内在性のObgH2がミトコンドリアに局在することを認めた。また、ObgH2 cDNAには、NCBIのRefSeqと比較して2か所の塩基が異なっている(両方ともアミノ酸も変化している)ものがあることから、ObgH2には遺伝子多型が存在する可能性があることがわかった。 アミノ酸飢餓に対する応答におけるObgH2の役割を、RNA干渉を用いて検討した。HEK293T細胞を、コントロール siRNAあるいはObgH2 siRNAで処理後、アミノ酸を欠いた培地で培養し、mTORC1シグナルおよびオートファジーをウエスタンブロッティングで検出した。その結果、ObgH2のノックダウンでは、アミノ酸飢餓後のmTORC1シグナルの減弱およびオートファジーの亢進に大きな変化は検知できなかった。また、同様の実験系でリボソームでの翻訳制御に関与するeIF2αおよびeEF2のリン酸化状態を観察したが、ObgH2のノックダウンで明らかな変化は認めなかった。 これらの結果より、ObgH2はアミノ酸飢餓後の細胞応答に大きな役割を果たしていないと考えられた。
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