研究実績の概要 |
食肉として利用される牛、豚、鶏の筋肉(骨格筋)は、収縮特性や代謝特性の違いから、遅筋タイプと速筋タイプに分類される。さらに、ミオシン重鎖アイソフォームを指標として4種の性質の異なる筋線維タイプMyHC1, 2A, 2X, 2Bが混在する。 食肉の美味しさの客観的指標として、食肉を構成するそれぞれの筋線維タイプひとつひとつがどのような遺伝子で構成されているのか明らかにすることを目的として、前年度では、マウス骨格筋をモデルとしてMyHC1, 2A, 2X, 2Bそれぞれの筋線維片をレーザーマイクロダイセクションで切り取り、骨格筋片からRNAを抽出することに成功した。最終年度では、この微量RNAを用いてRNA-Seqを行って得られたデータセットのデータ分析を行った。 MyHC1, 2A, 2X, 2Bそれぞれのアイソフォームの類似性あるいは異質性について検討するため、各々の相関係数を解析した結果、MyHC1は他の3つの筋線維とは最も相関が低いことが明らかとなった。一方で、MyHC2AはMyHC2Xと非常に高い相関を示した。相関係数値及びHeat Map分布から、4つの筋線維タイプの中で、MyHC1とMyHC2Bは遺伝子レベルで最も性質が異なっていること、MyHC2AがちょうどMyHC1とMyHC2Bの中間的な性質を有すること、MyHC2XはMyHC2AとMyHC2Bの間の性質を示すが、MyHC2Aとより類似した遺伝子発現パターンを有することが明らかになった。 本研究により、各筋線維アイソフォームの相関関係、特に中間タイプMyHC2A,2Xの知見が得られたことで、今後、より詳細に筋線維タイプと食肉の美味しさの相関について検討することが可能となった。
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