研究課題/領域番号 |
17K07808
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
橋本 直人 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (20414758)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 迷走神経肝分枝 / インスリン感受性 / レプチン |
研究実績の概要 |
本年度は、最初に迷走神経肝分枝(HV)切除の手技(HVx)の確認を含めて糖質の違いによるエネルギー代謝調節と迷走神経の関連性を調べた。ラットにHVxまたは偽手術を行い、それぞれの動物に通常食または高果糖食を6週間摂取させた。その結果、ANOVA解析により体重増加量、食餌効率(食餌摂取量1g辺りの体重増加量)でHVx処理の影響が見られた。また、耐糖能試験においてHVxの影響は見られなかったが、インスリン濃度においてHVx処理により血中濃度が増加した。さらに、血中レプチン濃度および脂肪組織におけるレプチンのmRNA量についてもHVx処理による有意な増加が見られた。以上のことから、インスリンの感受性に迷走神経が関与していることが明らかになった。一方、高果糖摂取により、体重増加量の減少、血中の尿酸値および中性脂肪濃度の上昇、肝臓中の糖代謝および脂質代謝の関連酵素が変動することを明らかにした。 次に、HVxまたは偽手術をしたラットにストレプトゾトシンを投与しI型糖尿病を誘発し、黒大豆種皮抽出物(BE)の経口投与による糖尿病改善作用を評価した。その結果、BE投与により、糖尿病の指標である空腹時血糖値の上昇が有意に抑制され、正常動物と同程度まで改善されたが、HVxではその抑制は見られなかった。また、耐糖能試験においても、BE無投与群と比較してBE投与群で血糖値上昇の抑制とインスリンの分泌応答が改善する傾向が見られたが、HVxではその傾向は消失することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
I型糖尿病に対する黒大豆色素と迷走神経切除の影響を見た実験では、予定通り、実験が終了している。 高脂肪食摂取による肥満動物における黒大豆種皮抽出物摂取の影響と迷走神経の関連性を評価する試験において、予定通り、動物飼育まで終了している。 また、行動解析試験の導入を行う予定であった。このうち、機器の導入およびメーカーによる操作方法の説明まで完了している。一方、強制水泳を試行する予定もあったが、よりストレスのかからない試験系のへ改良を検討している。 以上のことから、研究は概ね順調に推移していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度行った高果糖食摂取に対する迷走神経切除の影響評価試験は、ほぼデータ収集が終わっており、本年度中に論文としてまとめる。 I型糖尿病モデル動物に対する黒大豆色素と迷走神経切除の影響評価試験は、糖尿病に対する黒大豆色素の影響が十分には見えなかったことから、次年度は動物をマウスに変更した上で飼育期間を長くして、再実験を行う。 また、高脂肪食摂取による肥満動物に対する黒大豆色素と迷走神経切除の影響を評価した試験では、実験飼育と各臓器のサンプリングまで終了しており、本年度は各種サンプルにおける遺伝子およびタンパク質の発現等の分析を行い、論文にまとめる作業に着手する。 さらに、うつ様症状に対するケルセチン投与の影響評価を見る予定であったが、強制水泳試験によるうつ様症状ではなくマーブルベリー試験および高架式十字迷路試験を用いて、不安に対するケルセチン投与の影響を評価する試験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費に関しては、比較見積もり等を実施することで、全般的に経費の削減が出来た部分もあるが、飼料調製費が予定よりも多くかかったため、人権費を飼料調製費に振り分けた。トータルでは差額が生じたが、本年度は論文作成に向けた英文校閲等の費用が多くなることが予想されることから、生じた差額を成果の広報等に活用することを予定している。
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