研究課題/領域番号 |
17K07811
|
研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
渡辺 嘉 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (60416310)
|
研究分担者 |
室田 佳恵子 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (40294681)
佐藤 博文 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (70443546)
湯浅 明子 (小島明子) 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (90295709)
吉井 未貴 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (90826158)
松尾 道憲 京都女子大学, 家政学部, 准教授 (00335308)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | クロロプロパノール / 吸収性 / 細胞毒性 |
研究実績の概要 |
3-モノクロロプロパンジオール(MCPD)は、植物タンパク質酸分解物を用いた醤油などの調味料中に最初に検出され、国際がん研究機関(IARC)はヒトに対し発がん性があるかもしれない化合物(グループ2B)に分類している。FAO/WHOによる暫定耐容摂取量は2 ug/kg/日である。水溶性成分として遊離体が、油脂中には脂肪酸エステル型で検出される。3-MCPDの異性体、2-MCPDも同時に検出されるが後者の毒性や体内動態についてこれまでほとんど研究例がない。そこで本研究は、2-MCPD脂肪酸エステルの体内動態や毒性を明らかにすることを主眼とする。 本年度は、リンパカニュレーションラットに、非内在型脂肪酸を導入したMCPD脂肪酸ジエステル合成標品を投与し、リンパ液を回収、脂質成分をクロロホルム抽出、順送および逆相固定相カラムに供して夾雑成分を除去し、MCPD脂肪酸エステル画分を得て、MCPDジエステル定量には逆相カラムを、モノエステル定量には順送カラムを接続したLC-MSで定量分析を行った。体内吸収に関し、有意差を得て動態を議論するにはなお試行数を重ねる必要性があると判断された。また、遊離MCPDの細胞毒性を、ラット初代肝細胞を用いて評価した。3-MCPDよりも2-MCPDの毒性が低いことが示唆され、2-MCPDのLD50濃度は3-MCPDの約10倍高かった。これは、培養細胞HepG2を用いて評価した結果ともよく一致し、毒性強度はglycidol>3-MCPD>2-MCPDの順であった。MCPDの塩素原子結合位置により生体毒性強度が変化する機構は未解明である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、リンパカニュレーションラットに、2-または3-MCPD脂肪酸ジエステルを投与して、血液やリンパ液の当該物質を経時的にモニターする試験を実施し、再現性の確認を目指した。ラットの体調やリンパカニュレーション成否により試行数に限界があり、統計処理を実施し再現性を得、結論を導くにはなお、試行を重ねる必要があると判断された。また、ヒト単球細胞を用い、遊離MCPDによる炎症性誘発作用の評価をin vitroで試みた。MCPD異性体による炎症性誘発について有意差が認められなかった。in vivo評価において有意差のある結果を得るためには試行数をなお要する。 ラット初代細胞を用いた遊離MCPDの肝細胞毒性の評価試験においては、3-MCPDよりも2-MCPDの毒性が低いことが示唆され、培養細胞HepG2を用いた昨年度までの評価結果とよく一致した。 本年度はこれらの結果を公表する当初計画であったが次年度に持ち越すこととした。従って本研究はやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
ラット初代細胞を用いた遊離MCPDの肝細胞毒性評価の試行を重ね、再現性を確認して公表に向け、国際科学学術誌への投稿を計画する。単球細胞を用いた遊離MCPDによる炎症性誘発作用の評価をin vitroで評価する。リンパカニュレーションラットに、非内在型脂肪酸を導入した2-または3-MCPDジエステルを投与してリンパ液の当該物質を経時的にモニターする試験を実施し、再現性を確認して国際科学学術誌への投稿・公表を準備する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿に際し必要な校閲および投稿料などに使用予定だったが投稿が当初予定より遅れ次年度の投稿に予定を変更したため未使用額が生じた。次年度、論文校閲と投稿、これに伴う追加試験にかかる消耗品購入に使用する。
|