研究課題/領域番号 |
17K07812
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
奥田 徹 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10252008)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | タンニン / ワイン / ポリフェノール |
研究実績の概要 |
市販ワイン中の全ポリフェノール,BSA沈殿性および非沈殿性のタンニンの濃度を分析した。Cabernet Sauvignon 18点,Merlot 17点,Muscat Bailey A 21点を分析した結果,Cabernet Sauvignonでは,全ポリフェノールが2205 mg/Lであり,そのうち沈殿性が627 mg/L,非沈殿性が431mg/Lであった。Merlotでは,全ポリフェノールが2207 mg/L,沈殿性が583 mg/L,非沈殿性が443 mg/L,Muscat Bailey Aでは,それぞれ,1211,191,117となった。以上の結果から,ワイン中にはBSA非沈殿性のタンニンが多量に存在することが明らかとなった。BSA沈殿法はワインのタンニンの定量法として広く用いられているが,本結果はこの方法でタンニンを測定することの意味を部分的に否定するものであり,重要な知見であるとともに,ワインポリフェノールの約半分がタンニンであるという,従前の知見を裏付けるものとなった。ワイン醸造中のこれらの画分についても予定通り分析を行った。その結果,ワイン製造の極初期からBSA非沈殿性のタンニンが認められ,この化合物が水溶性が高いこと,原料ブドウの中で既に非沈殿性として存在していることが考えられた。他の実験でHPLC-MS/MSによるタンニンの加水分解を試みているが,回収率が低く,ワインタンニンの加水分解率が低いことが示唆された。本結果はCheynierら,世界的な実験を行う研究者と同じ結果であり,タンニン実験の難しさが明らかになった。そこで,今後は,沈殿性の有無を決定する要因を,タンパク質等の観点から分析する予定である。また,不溶性多糖類などとのタンニンの結合条件に関する論文をとりまとめ,投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験当初に推定されたように,塩酸加水分解によるタンニンの構造決定は難しいことが明らかになった。一方,BSA非沈殿性タンニンが,ワイン中に多量に存在すること,また,原料ブドウ中に存在する可能性が示唆されたことなどは,当初の予想より大きな進歩となった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,市販ワインの分析,および醸造中でのこれらの化合物の挙動を分析する。また,タンニンの分析が困難となったことから,沈殿性に影響を与えるブドウ由来,あるいは酵母由来のタンパク質が沈殿性に与える影響を分析することで,BSA 結合性と非結合性のタンニンの違いの解明を進める。
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