研究課題
本研究では脂溶性抗酸化物質のラジカル消去活性を評価するために、計測方法として検出感度と選択性が優れた電子スピン共鳴法(ESR)によるスピントラッピング測定法を採用した。モデルラジカルとしてはアゾ系のラジカル反応開始剤に由来するアルコキシル(RO・)ラジカルを対象とした。酢酸エチルを測定溶媒とし、アゾ系ラジカル反応開始剤であるAIBNとDMPOの混合溶液を70℃に加温すると、DMPOのRO・ラジカル捕捉体(DMPO/OR)のESR信号が優先的に観測された。そして、AIBNの熱分解反応とDMPOによるスピントラッピング反応を流路内で実現するLFI-ESR装置を新規に開発した。本研究では、LFI-ESR測定で得た脂溶性物質の抗酸化活性をトロロックス(TRX)基準物質として相対的に数値化するLAREC(lipophilic alkoxyl radical elimination capacity)値の解析法を確立し、ビタミンE誘導体、ビタミンEモデル分子、合成抗酸化剤および不飽和脂肪酸のLAREC値を系統的に解析した。ビタミンE誘導体、ビタミンEモデル分子、合成抗酸化剤などのフェノール性抗酸化活性物質のLAREC値は1.0から0.025の広い範囲に分布し、これら抗酸化物質の酸化電位とLAREC値には良好な直線関係が認められた。この結果は、フェノール性抗酸化活性物質とRO・ラジカルの反応が1電子移動過程を含む経路で進行することを意味している。次に、不飽和脂肪酸のLAREC値はフェノール誘導体に比べて少なくとも2桁低いことが明らかになった。また、不飽和脂肪酸のLAREC値は2重結合の置換数に相関して増加する傾向が顕著であり、シス型2重結合を3個有するリノレン酸のLAREC値が最大であった。最終年度は脂溶性抗酸化物質の抗酸化活性をLAREC値として数値化する新規方法論が確立できた。
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