食品の品質や安全性の評価に関する定量値の質の保証が国内外で重要な課題となっており,様々な食品関連成分に対する信頼性の高い分析法の開発が望まれている.本研究では,食品成分や有害汚染物質などを対象に測定対象化合物の標準物質を必要としない定量NMRを用いた信頼性が高く,高精度,迅速,簡便な食品関連成分の分析法を確立することを目的に検討を行った. 定量NMRによる精密な定量には,①測定対象化合物の定量に用いる定量用シグナルが,食品または食品素材中の夾雑化合物のシグナルと完全に分離していること,②測定対象化合物が重水素化溶媒(重溶媒)に完全に溶解していることが必須である.そこで,当該研究期間では,食品関連成分を中心に1H-NMRを用いた定量NMR(1H-qNMR)測定を行い,各化合物のスペクトルパターン情報の収集,測定溶媒の選定,定量に最適なシグナルの選定を行った.また,各化合物の照射パルス遅延時間,積算回数など測定条件の最適化を実施した.これらの検討結果を基に,ポリフェノールの一種であるアクテオシドなどを測定対象化合物として選択し,簡便な前処理と1H-qNMRを組み合わせた食品や食品素材中の含量を精確に測定可能な分析法を確立した. また,前述のアクテオシドおよびポリフェノールの一種であるペダリインを測定対象化合物として選択し,1H-qNMRとLCを組み合わせた測定対象化合物の定量用標品が不要な定量法の確立に関する検討を実施した.この検討では,あらかじめ1H-qNMRにて正確な純度を算出したパラオキシ安息香酸メチルを代替定量用標品とし,この標品および測定対象化合物2種のモル吸光係数比および分子量比等より,パラオキシ安息香酸メチルから測定対象化合物2種の精確な定量を可能とする分析法を確立した.また,本法はゴマ若葉粉末や加工食品に含まれる当該2成分の定量に適用可能であることを明らかとした.
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