研究課題
最終年度である令和2年度の研究では、食用高分子電解質複合体の形成メカニズムおよびハイドロコロイド食品の安定化と品質向上に係る検討を行い、以下の成果を得た。(1)キトサン-長鎖脂肪酸複合微粒子への栄養機能成分の担持と分散特性の評価前年度までに確立したキトサン-長鎖脂肪酸複合微粒子の作製方法をベースとしてさらに発展させることで、水難溶性の栄養機能成分を担持した微粒子の作製およびその特性評価に取り組んだ。これまでの検討に基づき、キトサンと複合化させる長鎖脂肪酸としてはオレイン酸を選定した。水難溶性の栄養機能成分としては、ウコン由来のクルクミン、トウガラシ由来のカプサイシン、およびビタミンEの主要成分であるα-トコフェロールを使用した。添加する栄養機能成分の濃度および複合微粒子作製に用いるオレイン酸の濃度を種々変えて実験を行った結果、これらの栄養機能成分はキトサン-オレイン酸複合微粒子内部に形成される疎水性領域に保持されていることが示唆された。さらに、得られた複合微粒子は、栄養機能成分を担持した状態で1か月以上安定な分散状態を維持できることを明らかにした。(2)カゼインタンパクを利用した高分子電解質複合体による油脂微粒子の安定性向上効果の検証前年度までに検討した、カゼインタンパクを乳化剤とするエマルションの作製方法およびエマルション油滴表面への高分子電解質複合体層の形成手法を用いて、油相にパーム油を含むO/Wエマルションに加えて、今年度はW/O/Wエマルションへの適用を検討し、その安定性を評価した。マイクロチャネル乳化法により油滴径が均一なW/O/Wエマルションを作製し、これに食用高分子電解質としてキトサンを複合化させ高分子電解質複合層を形成させることで、W/O/Wエマルションの室温保存時における油滴の合一や凝集が顕著に抑制されることを示した。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (2件)
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