2019年度は、抗体固定化ビーズにより捕捉されたサルモネラ菌をマイクロ流路に流して、そこでPCRを行った結果をもとに、ビーズによる捕捉が効率的に行われているかを、ビーズを保持しているマイクロチャンバーでのPCRによる結果の評価をまず、行った。ビーズを保持しているマイクロチャンバーではほとんどのチャンバーでPCRシグナルの上昇がみられ、菌が存在したと判断される、基準値を超えていて、ビーズによる捕捉が効果的であり、かつサルモネラ菌の検出に有効であることが示唆された。PCRシグナルの増加がみられなかったチャンバーは1例のみであった。しかし、流路では、ビーズが観察されないチャンバーでもPCRシグナルの上昇がみられる場所が多く存在していた。そこで、ビーズの分布とPCRシグナルの上昇について、関連性の解析を行った。流路を上流域、中流域、下流域の3領域に分け、それぞれ80個ずつのチャンバーとして、どの領域にビーズが分布しているかということと、PCRシグナルが上昇しているかを確認した。まず、ビーズに分布はほぼ中流域と、下流域であり、上流域に見られたのは1か所のみであった。一方、PCRシグナルについては、上流域ではPCRシグナルの平均値がすべての流路で中流域、下流域より低かった。中流域、下流域ではPCRシグナルの平均値はサルモネラ菌が存在したと判断される基準値より高かった。従って、中流域、下流域でPCRシグナルが上昇したのは、ビーズと共に運ばれてきたサルモネラ菌による可能性が示唆された。用いたビーズの直径は20マイクロメータであり、菌の直径の10倍程度なので、1個のビーズに複数の菌が捕捉されて流路に流され、流路中を遠心力に移動した際に、菌がビーズから離脱してしまったか、PCR中に移動した可能性が考えられる。
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