研究課題/領域番号 |
17K07826
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
塚正 泰之 近畿大学, 農学部, 教授 (90298943)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マダイ / 温度変更処理 / pH / メト化 / ドリップ |
研究実績の概要 |
活魚を高鮮度のまま急速冷凍し、解凍する前に一時的に温度変更処理(冷凍貯蔵温度よりも高く凍結点よりも低い温度域で保持する処理)ことで、冷蔵中の品質にどのような影響があるのかを明らかにする。それによって、冷凍・解凍技術の発展に資する知見を得ることを目的としている。昨年度はマグロ類2種(メバチ、キハダ)について-3℃から-7℃の範囲で温度変更処理を施し、キハダに対して温度変更処理が有効であるが、メバチには有効性が低いことを確認した。また、魚肉中のNAD分解酵素活性についても、反応pHと活性との関係を調査した。 本年度は-7℃で温度変更処理したマダイ肉を5℃で48時間貯蔵した場合の変化を調べた。 1)-7℃で4日間から7日間まで温度変更処理を施した結果、無処理はpHが7.1から6.3にまで低下した。一方、温度変更処理を施した肉では、5日間の処理では貯蔵後のpHに無処理との有意差はなかったが、6日間と7日間と温度変更処理の期間を延ばすことによって48時間冷蔵後のpHは6.7前後と無処理区と有意差が認められた。マダイのNAD分解酵素活性が-7℃では弱く、24時間で効果が認められたカツオ肉よりも長い期間-7℃で保持する必要があることが確認された。 2)pHの低下抑制効果が認められたことから肉中の乳酸量を測定した結果、乳酸量は7日目まで温度処理中にも増加し、さらに温度変更処理7日間の試料でも冷蔵中に乳酸が増加することが確認された。 3)ドリップ量は無処理区で4.5%であった。一方、温度変更処理有意差は認められないが4日から7日までドリップ量は無処理区よりも多く、7日目のドリップ量は7.0%と高い値を示した。 マダイでは、pHに対して温度変更処理の効果は認められたものの、乳酸量、ドリップ量については期待した効果は確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 1.冷凍赤身魚の温度変更処理条件の検討をマグロ類に広げて実験を実施し、キハダについては-5℃、-6℃で24時間が、冷蔵中のpHを高く保ち、メト化の進行も抑制することを明らかにし、カツオ肉と同等であることが確認された。 2.マダイ肉に対する温度変更処理を施した結果、pH低下抑制効果は確認されたものの乳酸量やドリップ量には高pH保持の効果が認められなかった。 3.マダイ肉のタンパク質変性へのpHの影響を調べるために筋原線維Ca-ATPase活性、キモトリプシン消化性の測定を準備していたが、間に合わなかったが、測定方法に関する予備実験は完了しており、次年度に即座に実施できる体制が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度として、研究全体を完成させる必要があることから、昨年度の実験で間に合わなかった温度変更処理がマダイの筋原線維タンパク質変性に及ぼす影響を筋原線維Ca-ATPase活性、キモトリプシン消化性を調査する。 また、赤身魚(カツオ、マグロ)、白身魚(マダイ)と調査して残っている中間色魚(ハマチ)について、温度変更処理が血合肉のpHとメト化、普通肉のpHとタンパク質変性(透明感、破断強度、ドリップ量、筋原線維Ca-ATPase活性、キモトリプシン消化性にどのように影響するのかを処理温度、処理時間を変えて明らかにしていく。 赤身魚ではカツオとキハダは類似していることが確認された。また、白身魚では温度変更処理でpH低下抑制効果は確認されたが、ドリップ量や生成乳酸量に対する効果は認められなかった。 ハマチは血合肉の冷蔵中の色調変化が非常に速いことが知られている魚類で、赤身に相当する血合肉と白身に相当する普通肉を併せ持つ中間色魚であることから、温度変更処理の効果が赤身魚や白身魚とどのように異なるのかが明らかになると考えられる。それにより、赤身魚、白身魚、中間色魚の特徴が明らかになると思われ、温度変更処理の利用に関する有効な知見となると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度使用予定の500000円を3697円下回ったが、実験で購入した試料魚の価格が魚体サイズによって大きく変動することから残金を多めに残していた結果、次年度に使用することとなった。 次年度は活けマダイと活けハマチの両方を試料魚として試験を計画していることから本年度よりも多くの予算が必要となる。本年度の繰越金を有効に使って研究を遂行する。
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