温度変更処理が急速冷凍した9種の魚肉のNAD+含量等に及ぼす影響を調べた。 昨年までの研究で,魚種によって温度変更処理によるNAD+含量やATP含量、pHやタンパク質変性などに対する効果が異なることが確認されたことから、イシガキダイ、クエ、中国イサキ、マアジ、シマアジ、ヒラメ、ハマチ、マダイ、カンパチの9魚種を対象とした。温度変更処理は-7℃24時間のみで行い、温度変更処理がNAD+含量やATP含量、冷蔵保存中のpH低下に及ぼす影響について明らかにした。 NAD+含量については温度変更処理を施すことによって、クエ、中国イサキ、マアジ、シマアジ、ヒラメの5魚種において有意な減少が認められた。このうち中国イサキ、マアジ、シマアジでは冷蔵保存中のpH低下の抑制効果も確認され、NAD+の減少によって冷蔵保存中の解糖反応を停止させることができていたと確認された。ATP含量については温度変更処理を施すことによってマアジとシマアジで有意な減少が認められた。また、イシガキダイ、クエ、中国イサキ、ヒラメでは有意差は認められなかったが、平均値では温度変更処理を施すことによってATP含量が半減しており、解凍時に起こる解凍硬直の抑制に効果が期待される。ハマチ,マダイ,カンパチの3魚種に対しては全く効果が確認されなかった。9魚種を使用して温度変更処理の効果を確認したが、魚種によって効果は異なっており、分類学的なグループ分けでの効果の予測は難しいと考えらたため,魚種ごとに温度変更処理の効果の確認を行う必要があると考えられる。今回,温度変更処理の効果が確認されなかった3魚種は養殖至適温度が他魚種よりも高めであることから,至適水温の違いが-7℃24時間の効果に関係している可能性はある。
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