研究課題/領域番号 |
17K07836
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
上村 佳奈 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (40570982)
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研究分担者 |
南光 一樹 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40588951)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 森林風害 / 立木振動 / 立木衝突 / 強風 / 歪 / 台風 |
研究実績の概要 |
本研究は台風などの強風時における立木間の動的相互作用(立木の振動、衝突など)についてまず野外観測を実施し、モデル化することで、林分の耐風性予測精度の向上を目指すことを目的としている。平成30年度は前年度からの野外観測を継続した。観測は順調に進んでいたが、2018年9月30日から10月1日未明にかけて台風24号が通過し間伐プロット12本中6本に風倒被害が発生した。プロット内に設置した超音波風速計も1日午前2時過ぎにマストとの接続部分が破損し落下した。強風などでデータロガーとして使用しているRaspberry Pi3にも影響はあったが計23本の歪ゲージのデータと計20本分の慣性計測センサーのデータを取得することができた。データを処理した結果、被害木は最も速い風が観測された1日午前2時過ぎよりも1時間早い午前1時過ぎには傾倒し始めたことが確認された。本被害発生後、安全確保のため間伐プロット内の立木を伐採し本プロットでの観測は終了した。代替として被害がなかった無間伐プロットの24本に南北方向12本を追加し、当初の予定通り周辺の防風木を伐採して新たな林縁を作成した。そして2019年1月から計36本の振動観測を新たに開始した。破損した超音波風速計にかわり、三杯風速計を同位置に設置し、プロット外の三杯風速計とともに観測を再開した。モデリングについては、既存研究の理論値を使った森林風害伝播モデル(プロトタイプ)は完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
立木の振動観測は2018年9月末までは順調に進んでいた。しかし台風24号(9月30日から10月1日)により間伐プロットに倒木被害が発生し、プロット内の超音波風速計が落下して破損した。安全確保のため間伐プロットの木をすべて伐採した。その後、無被害だった無間伐プロットを拡張し、追加した対象木へのセンサーの設置、全計器の調整、代替の三杯風速計を設置し、観測を再開した。データ解析および新たな観測について、現時点でおおむね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
無間伐プロットでの立木の振動についての観測を継続する。台風24号の被害によって被害発生時の振動データの取得に成功したため、本データの解析を年度前半に終了させる。被害前の振動観測データ(約9ヶ月分)が蓄積されたことから、立木の長期振動、衝突について風況データと合わせて傾向の分析を開始する。2019年11月に立木振動の観測を終了し、当初の予定通り無間伐プロット36本の引き倒し試験を実施して根元の最大回転モーメント等を計算する。センサーと試験の結果からパラメタを取得して数理モデルを完成させ、立木振動力学モデルとの比較検証を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者の南光主任研究員(森林総合研究所)が長期海外出張で約8ヶ月不在になったため、当初予定していた試験地でのデータ回収手法の変更や試験を延期した。そのため、分担金の未使用額が生じた。これについては次年度計画している引張試験と引き倒し試験において、器具の購入および重機のレンタル料のため使用する。
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