研究課題
本研究は、環境条件を含めた台風時の立木間の動的相互作用をモデル化し、林分の耐風性予測の精度向上を目的とした。最終年度(2019年度)は前年度に引き続き、森林総合研究所千代田試験地において立木の動的現象(根元の回転モーメント、樹冠・樹幹の変位など)と風速について2019年10月末まで観測した。本観測は、2018年台風24号によって間伐プロット内に被害が発生したため、2018年11月からは無間伐林分のみの観測になった。ただし、プロットの範囲を拡大し、前年までの対象木を24本から38本に増やした。2019年11月には、この無間伐林分内のすべての立木の引き倒し試験(樹幹の地上高3mの位置にワイヤーをかけ、重機で引き倒し、根元における最大回転モーメントを算出)を実施した。これらの観測結果から、強風中の立木振動の特徴や、それに影響を与える立木の形状と周辺木の有無の重要性が明らかになった。さらに立木引き倒し試験によって各立木の根系支持力などの力学的傾向も明らかになり、立木破壊力学モデルの改善も可能になった。本研究の成果の重要性は、通常観測が困難である台風の強風環境下での立木動態を明らかにしたことで科学的知見を得たことにある。さらに地球温暖化の影響で大型熱帯低気圧(台風)の増加や特に人工林の高齢化から世界各国で大規模な森林被害が多発しており、台風による森林被害の予測精度の向上にも寄与するという社会にも貢献できる研究成果となった。
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Agricultural and Forest Meteorology
巻: 268 ページ: 279-288
https://doi.org/10.1016/j.agrformet.2019.01.020
巻: 265 ページ: 16-29
https://doi.org/10.1016/j.agrformet.2018.10.022