研究実績の概要 |
本研究では、極東アジア産樹木葉枯性病害病原糸状菌のタイプ標本の検討・指定を行い、またその派生株を用いて形態観察、多遺伝子座分子系統解析、宿主等の情報を加えて、分類学的検討を行っている。本年度の成果は海外の共同研究者と協力し日本産の樹木葉枯性病原菌ないし内生菌として知られるTubakia属菌の基準標本とその由来株を用いて網羅的な検討を行った。結果、日本産Tubakia属菌は知られているよりも非常に多様性が高いことが明らかになった。さらに、Tubakia属をMelanconiellaceaeから独立させ、新科Tubakiaceae内にこれまでのTubakia属に加え、新属Apiognomonioides (type species: A. supraseptata), Involutiscutellula ( l. rubra), Oblongisporothyrium (O. castanopsidis), Paratubakia (P. subglobosa), Racheliella (R. wingfieldiana), Saprothyrium (S. thailandense), Sphaerosporithyrium (S. mexicanum)を提案、新種を含め24の新規分類群を提案した。これにより分類が曖昧なブナ科の温帯広葉樹の病原菌、内生菌の研究が加速すると思われる。 これら樹木寄生性土壌病原菌Fusarium属菌の研究の過程で分子系統関係から、従来の薬剤抵抗性系統の検出技術よりも簡便、迅速に検出できる手法を見いだし、ムギ類赤かび病菌を例に成果を学術雑誌に投稿、受理された。 また、インドネシア産ウドンコ病菌の多様性と系統に関する研究を行い、1新属を提案する論文を投稿する予定である。 この他に支援を受けた研究成果として国際シンポジウム(2017年8月オランダユトレヒト), アジア菌学会(2017年10月ベトナムホーチミン)にてべと病菌の生物バーコーディングとFusarium属菌の薬剤抵抗性系統についてポスター発表を行った。
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