ヒノキの雄花生産に花芽形成期の気象条件および立地環境条件が及ぼす影響を評価することを目的として,京都府の北部(綾部市)および南部(京都市)の計13地点においてヒノキ雄花生産量の観測を実施した。2023年はすべての地点で雄花生産量が多く,豊作であったことから,2022年は花芽形成が促進される気象条件であったことが推察された。2005年または2006年以降に観測を開始した京都市の3地点と綾部市の2地点について,2023年までの19年間または18年間では,3地点で2023年が最大であった。これら5地点について,梅雨明け(平年値)を基準にした期間の前年の平均気温および降水量の平均値または合計値を説明変数とし,ステップワイズで変数を選択して雄花生産量の予測モデルを作成した。その結果,京都市の3地点では梅雨明け前後4週間または梅雨明け後4週間の平均気温と,梅雨明け前後1週間または4週間の降水量,綾部市の2地点では梅雨明け前後6週間の平均気温と梅雨明け前後4週間の降水量が各地点の雄花生産量に強い影響を及ぼしていることが示唆された。 また,高知県の4地点の人工林でもヒノキ雄花生産量の観測を継続して行った。高知市の人工林における2006年~2008年および2017年~2022年の9年間の雄花生産量は,梅雨期の日降水量の平年値が最大となる日の前後6週間の降水量が多いほど少ない傾向が認められた。一方で,梅雨期から夏の気温による影響は認められなかった。京都と高知の結果から,ヒノキの雄花生産に気象条件が及ぼす影響は気候および地域によって異なることが推察された。
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