研究課題/領域番号 |
17K07846
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
谷口 真吾 琉球大学, 農学部, 教授 (80444909)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 樹木の繁殖 / 開花結実 / 豊凶周期 / 安定同位体 / 繁殖資源 / 種子生産 / 亜熱帯島嶼 / リュウキュウコクタン |
研究実績の概要 |
果実生産に関わる光合成産物の転流量と糖、炭素、窒素の蓄積量ならびに貯蔵量を定量分析した。2018年の果実生産は、繁殖モジュール単位に着果した果実数が1.65(A個体)~2.12(B個体)粒/繁殖枝であった。これは、並作年であった2013年と2016年の果実数(1.84粒/繁殖枝)の0.9~1.2倍の果実を生産したことになり、2018年の果実の豊凶周期は並作年であった。 同年6月26日に2個体の0%摘葉区の繁殖枝に取り付けた厚手ビニール製簡易チャンバー内で13C安定同位体をバリウムで発泡させ、CO2を同化させる13Cトレーサ実験を行った。この結果、果実の肥大伸長成長が最大期であった果実成熟のステージでは、B個体では処理区間に相互の13Cの転流は認められなかった。しかし、A個体では、無剥皮区+100%摘葉区と剥皮区+100%摘葉区の2区のみ0%摘葉区の葉で同化された13Cの転流が豊作年に比するとかなり低い値で認められた。可溶性糖のうちスクロースは2個体とも果実成熟初期から中期(7月1日、24日)のステージでは検出されず、果実成熟後期(8月29日)のみ検出された。スクロースは7月の果実成熟期に果実生産に消費され、8月以降の完熟後に果実に蓄積されることが示唆された。グルコースは2個体ともすべての繁殖枝の枝で検出された。13C の転流が認められたA個体の無剥皮区+100%摘葉区と剥皮区+100%摘葉区の2区では、果実成熟初期から中期(7月1日、24日)のステージにおいてグルコースの蓄積量が他区よりも少なかった。このことは13Cの転流が認められなかった繁殖枝では、当年に展開した葉で生産された当年の光合成産物(同化された炭素)のみを果実生産に用い、13C の転流が認められた繁殖枝では、他の繁殖枝から転流した炭素と枝に貯蔵されるグルコースの2つの資源を使って果実を成熟させたことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
沖縄島嶼、亜熱帯域に分布し、琉球列島の在来種である亜熱帯常緑広葉樹リュウキュウコクタンを供試した。リュウキュウコクタンの繁殖資源の配分特性を操作実験によって検証し、その結果をもとに結実誘導に必要な繁殖資源の閾値を考察し結実豊凶の発生メカニズムを体系化することが本研究の課題である。2年目の2018年は繁殖枝に施した環状剥皮と摘葉処理が及ぼす影響を安定同位体13Cのトレース実験により検証した。さらに、種子生産に関わる光合成産物の転流量と糖、炭素、窒素の蓄積量ならびに貯蔵量を定量分析した。具体的には開花結実から幼果実期、果実の成長最大時期、果実成熟期、果実落下期の4区分の繁殖ステージごとに各操作実験区から繁殖モジュールをサンプリングし、時期ごとに果実とそれ以外の繁殖モジュールの器官ごとの炭素、窒素、糖の定量分析を行って果実生産に必要な繁殖資源の配分量を繁殖の成熟ステージごとに推定することを試みている。これまでの一連の研究結果から、果実のシンク能に関する知見として、成熟段階ごとに果実1果の乾燥重量の変動は、繁殖枝(一次枝のみ)に着果する果実数の多少に関わらず果実重量の変動範囲は小さかった。これは繁殖枝に1果でも最大着果数の6果でも果実の繁殖資源に対するシンク能は同等であることが示唆された。さらに、果実生産における繁殖資源の配分特性は繁殖枝の果実生産量が少ない並作年では、当年の葉での光合成産物と枝に貯蔵する前の可溶性糖を利用していることが示唆された。 今後、研究期間の残り2年間に結実量が年次により異なることが期待されるが、結実量の異なる繁殖モジュールでの貯蔵炭水化物量(可溶性糖+デンプン)と貯蔵窒素量の経年値を得るための研究計画に従い開花、結実、果実生産、成熟に必要な繁殖資源の配分量を繁殖ステージごとに推定し、結実の豊凶差による繁殖資源の配分収支と季節貯蔵量の変化、年貯蔵量を把握する。
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今後の研究の推進方策 |
リュウキュウコクタンを供試する。リュウキュウコクタンの開花結実には豊作、並作、凶作の豊凶の年周期(マスティング)があり、開花結実のレベルが最大になる年と結実しない年の調査データを確保する必要性がある。平成29年は小豊作年であった。30年は凶作に近い並作であると推察している。研究期間の4年間、次の3項目の研究課題を同じ研究方法により毎年継続実施し、調査データの年蓄積を重ねる。 1.種子生産に関わる炭水化物の供給源の解明 13C安定同位体の標識実験によって、種子生産の炭素源は「結実当年に生産された比較的新しい光合成産物(炭水化物;可溶性糖+デンプン)」、あるいは「結実年以前に枝に樹体内貯蔵された貯蔵炭水化物(可溶性糖+デンプン)」のどちらかが種子生産に貢献、寄与しているかを解明する。実験方法は、開花結実から種子成熟までの繁殖ステージ別の繁殖器官ごとに、13C安定同位体標識法を用いて測定する。2.種子生産に関わる窒素の供給源の解明 15N安定同位体の標識実験によって、種子生産の窒素源は「根から吸収した窒素」、か「結実年以前に枝に樹体内貯蔵された窒素(貯蔵窒素)」のどちらが種子生産に貢献、寄与しているかを解明する。さらに、茎頂組織の花芽分化と花芽形成を経時的に組織観察する。3.種子生産に関わる繁殖資源の年貯蔵量の変化と豊作年の誘導に必要な年貯蔵量の閾値の解明 定期的に繁殖ステージ別にサンプリングした繁殖器官のシュート長と乾重、葉数、葉サイズを計測し繁殖器官ごとの糖分析、炭素、窒素の定量分析を行う。以上3項目の研究課題を4年間実施し開花結実、果実・種子生産に必要な繁殖資源の配分量を繁殖ステージごとに推定する。さらに、繁殖資源の配分収支と貯蔵炭水化物量(可溶性糖+デンプン)、貯蔵窒素量の経時データを繁殖モジュールごとに集積し、種子生産に関わる繁殖資源の季節貯蔵量、年貯蔵量の変化量を把握する。
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