研究課題/領域番号 |
17K07848
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
上村 真由子 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (60444569)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シイタケ / 木材腐朽菌 / 菌体バイオマス / 呼吸速度 / 環境ストレス |
研究実績の概要 |
本研究では、シイタケをモデルケースとして、環境ストレスが分解者の分解能力に与える影響を明らかにすることを目的としている。本年度は以下の4項目を遂行した。1)昨年度の室内培養実験の結果から、一時的な高温、湛水、乾燥の環境ストレスは、いずれもシイタケの呼吸活性を有意に低下させるが、シイタケバイオマスの減少を生じさせるのは高温ストレスのみであることが明らかになった。これは環境ストレスのシイタケへの影響を示したものとして意味がある。2)昨年度の室内培養実験により、均質な基質を用いた実験を組む必要性が示されたため、木粉を用いた培養方法を確立した。次に、この培養条件に基づいてシイタケを56日間培養し1週ごとに行った呼吸測定から、シイタケの増殖を確認することができた。同時にサンプリングした木粉内のシイタケバイオマスとの関係については、今後得られるシイタケバイオマスとの比較から明らかにする。3)野外での培養実験により、コナラ原木にシイタケを植え付けたものの呼吸速度と、サンプリングした木粉内のシイタケのバイオマスを得た。これにより、シイタケバイオマスは、2年間で10-6から10-1 mg/mgまで増加し、温度とともに呼吸速度の変動を説明する要因となった。また2018年10月の台風による海塩の供給直後に呼吸速度の大幅な減少がみられたことから、海塩の沈着を新たな環境ストレスとして考慮する必要があると考えられた。4)野外における自動測定装置に加え、室内での集中的な測定に自動測定装置を導入した。約2週間の測定中に、表面から水を添加する実験を行い応答を調べた。どちらの測定も並行して手動による測定を行っている。詳しい解析については今年度に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度に行った木粉を用いた室内培養実験のシイタケバイオマスの推定が、機器の故障により遅れていることと、自動測定によって得られたデータの解析が進んでいないため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度の進捗の遅れを修正し、これまでに得られたデータを用いて、室内、野外における実験や測定から、環境ストレスがシイタケの呼吸活性やバイオマスに与える影響を明らかにする。当初の計画では、シイタケによる木材の分解モデルを構築することを最終目標として掲げていたが、野外におけるシイタケの培養が不調なため、反復間の変動がかなり大きく代表値を得ることが難しいことが明らかになっている。この問題の克服のために、クロロホルム燻蒸法やエルゴステロール定量といった、シイタケ以外の微生物や菌類を含むバイオマス推定を行う必要がある。
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