本研究では、シイタケをモデルケースとして、環境ストレスが分解者の分解能力に与える影響を明らかにすることを目的としている。本年度は以下の2項目を遂行した。1)野外におけるホダ木を用いたシイタケ培養実験において、自動測定装置から得られたホダ木の呼吸速度のデータを解析した。また、同様にシイタケを植菌したホダ木から、月毎に木粉サンプルを得て、初年度に開発した手法を用いてシイタケバイオマスの定量を行った。これらのデータから、野外におけるホダ木の分解速度が、これまでに示された様に温度や降雨といった環境要因によってコントロールされるだけでなく、シイタケ菌体バイオマスによって示される菌の成長速度にもコントロールされていることが明らかになった。シイタケを植菌したホダ木内の菌体は植菌1年目に比べ2年目は倍以上となったが、呼吸速度も同様に大きくなった。材密度の減少に応じた材の含水率の上昇も見られ、含水率と菌体バイオマスの層状効果も見られた。これらの結果から、分解者微生物のバイオマスを組み込んだ木材腐朽モデルを構築することができた。2)初年度に開発した定量PCRを用いたシイタケ菌体バイオマスの定量法と、昨年行った培養実験の結果に関する論文をPLOSONEに投稿し採択された。バイオマス定量法では、開発したプライマーの詳細、定量PCRの設定条件を示した。培養実験については、木粉にシイタケを植菌し、培養60日間におけるシイタケ菌体バイオマスと呼吸速度のモニタリングを行い、菌体バイオマスと呼吸速度との間には相関が見られなかったが、菌体バイオマスの成長率と呼吸速度との間に相関が見られ、呼吸速度は菌の成長段階を知る上で重要な指標であることを示した。
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