研究課題/領域番号 |
17K07852
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
北村 系子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 (00343814)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | NGS / SSR / MIGseq / EST-SSR |
研究実績の概要 |
2013年に発見された北進最前線のブナ集団において全ての個体から葉を採取し、DNA試料を抽出した。さらに、既知の北限地帯に生育するブナ集団の中から、最も近くの隔離集団、比較的面積の広い集団を選び、成熟木のDNAサンプルを採取し抽出を行った。これらの試料を用いて、ゲノムワイドに情報を得ることが出来る MIG-seq 法を用いてNGS解析を行った。合計18集団、192個体のサンプルを用いて、まず、選択的プライマーによって2段階の絞り込みを行い,2522個のSNP推定遺伝子座を得た。これらについてジェノタイピングを行った。北進最前線集団と背後の北限地帯の集団17集団を用いて主軸分析を行ったところ、最前線集団および近隣の隔離集団は遺伝的浮動の影響によって集団分化が著しく起こっていることが示唆された。北進最前線集団は背後の北限集団内の比較的広い面積の集団に近縁な遺伝的変異を持つことから、これらの集団に由来する可能性が示唆された。 コアレッセント解析に用いる使用するマイクロサテライト (SSR)遺伝子座は,12 座の核 SSRの分析は終了した。さらに、 87座の EST-SSR遺伝子座について、マルチプレックスセットの開発を行った。 集団の世代構成を調べるために大径木を中心に年輪解析用のコアサンプルを採取した。コアサンプルの解析結果から、最前線集団は1900年代初頭に侵入定着したことが示唆された。下層の若木については芽鱗痕を数えることによって年齢を推定した。芽鱗痕が確認できない下層木については既存のデータから樹齢を計算式によって割り出した。以上の結果から、北進最前線集団では約3世代の世代交代が行われていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画ではH29年度に最前線ブナ集団の全ての個体からDNA試料を採取し、代表的な成熟木から年輪解析用コアサンプルの採取を行う予定であった。これらについて、予定通り試料採取を終了した。 分析実験に関して、予定していた次世代シーケンス解析は目的集団および北限地帯を代表する集団について192個体の分析を終了した。さらに、次年度行うマイクロサテライト遺伝子座について12座の分析を終了した。さらに87座のEST-SSRについて研究対象集団での増幅の検討を終了した。 以上、当初計画通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は現在まで計画通り進行している。今後も研究計画に沿って以下のとおり進める。 H30年度の研究計画では最前線のブナ集団のマイクロサテライトEST-SSR遺伝子座の分析を行う。H29年度に増幅が確認された遺伝子座すべてについて、18集団を対象に分析を行う。核遺伝子SSR分析および次世代シーケンスのデータと合わせてコアレッセント解析を行い、北進最前線のブナ集団の由来を明らかにする。 H31年度は年輪解析を行う。また、種子の遺伝子分析と親子解析を行い、遺伝子流動の実態を明らかにする。以上の結果を総合して、学会発表および論文執筆を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験試薬および実験用ディスポーザブル製品がキャンペーンなど予算より安価で納入されたために、差額が生じた。次年度の助成金と合わせて、実験消耗品の購入に使用する計画である。
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