研究課題/領域番号 |
17K07852
|
研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
北村 系子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00343814)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 遺伝的浮動 |
研究実績の概要 |
当初計画ではH30年度に最前線のブナ集団のマイクロサテライトおよびEST-SSR遺伝子座の分析を行う計画であり、これらについて、予定通り分析実験を行なった。北進最前線および既知の北限地帯に生育するブナの成熟期に達している25個体について、隣接する北限集団17集団との類縁関係を比較するために、MIG-seq法による次世代シーケンス解析を行った。その結果、2522座のSNPマーカーを得ることができた。このうち、欠損データ率20%でフィルタリングし、382座を得た。これらの遺伝子座を用いて主成分分析を行った結果、北進最前線の集団では第一軸で大きく分離し、他の北限の小集団が第二軸で大集団と分離した。同様に、個体ベースでの主成分分析でも北進最前線ブナ集団が大きく他の集団から離れる結果を得た。また、過去の集団サイズの増減を分析した結果、各集団で同一時期に集団サイズの減少が起きていることが示唆された。しかしながら、サイズの減少パターンは集団によって違いがあり、集団の歴史的な動態が反映されていると考えられる。また、北進最前線集団の集団サイズが小さいことも明らかになった。これらの結果は、分布北進最前線の小集団では隔離の影響による遺伝的浮動が大きいことを示している。マイクロサテライト92座を用いて集団の遺伝的多様性を分析した結果、最前線のブナ集団では遺伝的多様性の低下が著しいことが示唆された。最前線個体群で採取した種子については個体数が多かったため、本年度は抽出のみを行い、遺伝マーカー分析は次年度に行うこととした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りに研究は進捗している。種子のマーカー解析については個体数が多いため、実験の効率を鑑みて、次年度にまとめて分析をすることとした。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は現在まで計画通り進行している。今後も研究計画に沿って以下のとおり進める。 H31年度は引き続きマイクロサテライト分析を行い、核遺伝子SSR分析および次世代シーケンスのデータと合わせて各種解析を行い、遺伝子流動の実態と北進最前線のブナ集団の由来を明らかにする。以上の結果を総合して、学会発表および論文執筆を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ターゲットとする分布最前線個体群で採取した種子の数が多かったため、遺伝マーカーの分析は次年度にまとめて効率よく実験を行うこととした。そのため、分析用試薬購入のための物品費と実験補助の謝金を次年度に使用することとした。次年度は当初計画していたマイクロサテライト分析に加えて種子の分析を行う。
|