重要な森林病害であるマツ材線虫病の流行過程を定量的に把握、モデル化することを目的に、野外マツ林での罹病枯死木発生動態調査と並行して①宿主感受性、②媒介者密度、③線虫の毒性の3つのパラメータを経年的に観測した。研究の結果、調査区マツ林における罹病枯死木の発生動態と観測した3パラメータの変動との関係は明確でなく、当初想定した流行過程のモデル化を達することはできなかった。本研究で調査地をおいた岩手県のような寒冷地のマツ林において、罹病枯死木の発生は過去の流行で生じた潜在感染木の日和見発症を反映している可能性があり、媒介者密度上昇をもたらす要因がなければ材線虫病の自然終息が起こりうることを指摘した。
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