北日本の沿岸地域の広葉樹林では、海岸にカシワが、内陸にミズナラがそれぞれ生育する。北海道にはカシワの分布の北限があり、その北にはミズナラが海岸に生育する。海岸のミズナラは、海岸環境に適応したカシワのように毛が多く丸い葉や太い枝をつけ、内陸のミズナラと葉や枝の形態が異なるが、その由来は明らかではなかった。内陸と海岸のミズナラとカシワの遺伝子型を調べたところ、海岸のミズナラとカシワが派生的な対立遺伝子を共有することがわかった。これらの対立遺伝子は、内陸のミズナラとカシワの交雑の結果生じた子孫の数世代に渡るミズナラとの戻し交配による遺伝子浸透によってミズナラに入ってきたと推定された。
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