研究課題/領域番号 |
17K07863
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
福田 陽子 (後藤陽子) 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所林木育種センター, 主任研究員 等 (00370825)
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研究分担者 |
渡邊 陽子 北海道大学, 農学研究院, 研究員 (30532452)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カラマツ / グイマツ / ハイブリッドカラマツ / 雑種強勢 / フェノロジー |
研究実績の概要 |
グイマツを母樹とし、ニホンカラマツを花粉親とするハイブリッドカラマツには、両親種よりも成長が早く優れた材質特性を示す家系が存在する。ハイブリッドカラマツ優良品種とグイマツ、ニホンカラマツの葉および形成層における表現型のフェノロジーと遺伝子発現のフェノロジーを総合的に考察することにより、雑種強勢が生じる分子プロセスを明らかにするのが本研究の目的である。 今年度は主に、表現型における種間変異および雑種特性の調査を進めた。グイマツ、ニホンカラマツ、ハイブリッドカラマツが植栽されている試験地において開葉日を調査した結果、グイマツではカラマツよりも7日から12日開葉が早かった。ハイブリッドカラマツではその期間内に全個体が開葉し、中間的な時期に開葉する個体が多かった。完全に展葉した5/22から落葉を開始した10/20まで、葉の乾燥重量あたりのクロロフィル量を測定した結果、全期間を通じてハイブリッドカラマツはグイマツと同程度のクロロフィル量を示し、カラマツはグイマツおよびハイブリッドカラマツよりもクロロフィル量が低かった。今年度は調査個体数が少なく、同一個体における試料間の差異が大きかったために、クロロフィル量の季節変化を明らかにすることができなかった。一方で、画像解析によるクロロフィル量の推定手法についても検討を進めており、クロロフィル量の季節変化における種間変異および雑種特性については、来年度以降の課題としたいと考えている。また、形成層活動においては、グイマツではカラマツよりも開始時期が早く、ハイブリッドカラマツではグイマツに近いパターンを示した個体とカラマツに近いパターンを示した個体があった。また、7月上旬にカラマツはすでに晩材仮道管の形成を開始していたが、形成層活動開始の早かったハイブリッドカラマツでは晩材仮道管は形成されていなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
葉フェノロジーの調査個体の樹高が高く観察が困難であること、樹冠下部から枝を採取するためクロロフィル量の個体内でのばらつきが大きくなるために季節変化が検出しにくいという問題点が見出された。同時に遺伝子発現解析に供するサンプルも採取しているが、同様に個体内でのばらつきの影響により、種間での比較が難しくなる可能性があるため、供試個体の再検討が必要と考えられる。また、木部組織の観察開始時期が遅れたためにグイマツの形成層開始時期を明らかにすることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、表現型フェノロジーの調査を行う。また、表現型フェノロジーの調査と同時に遺伝子発現解析用のサンプリングも行い、発現解析を進める。葉フェノロジーの観察およびサンプリングについては、今年度と同一クローンのサイズが小さい個体(つぎ木増殖後の年数が短い)が植栽された試験地があるため、この個体の使用を検討する。来年度以降は開葉期より木部組織のサンプリングを開始し、形成層活動の開始時期を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
木部組織観察用の試薬および消耗品について、すでに所有している在庫を使用したために次年度使用額が生じた。次年度は木部組織観察の開始時期を早めるため、採取するサンプル数も増加することから、これらの保存および試料作成に使用する。
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