研究課題/領域番号 |
17K07864
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
上田 明良 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90353599)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 外来種 / 競争排除 / マングース / ネパールモンシデムシ / 絶滅 / 沖縄島 / 奄美大島 / 小動物死骸 |
研究実績の概要 |
魚肉をベイトとした吊り下げ式トラップを2017年11月13-16日に沖縄県国頭村から沖縄市にかけての24カ所の調査地に2器ずつ計48器設置し、2018年5月16-17日までネパールモンシデムシ(以下モンシデムシ)を捕獲した。この間、4度捕獲虫の回収とベイトの交換を行った。その結果、モンシデムシの捕獲数は、マングースの生息密度に明確に対応していた。すなわち、捕獲はマングースがほぼ除去された最初のマングース北上防止柵(ライン1)以北に集中していて、14カ所の調査地(2トラップ計)で38-150個体(平均79個体)捕獲された。ライン1の南に新たに設置されたライン2との間は、マングースが低密度に生息するゾーンで、そこの2調査地では、それぞれ28、30個体が捕獲された。マングースが高密度に生息するライン2以南では、ラインに近い場所で1-8個体捕獲されたが、それ以南では0で、8カ所の調査地の平均が2個体であった。小動物(市販の冷凍マウス)死骸を2018年4月9-12日および4月12-15日に地表に置き、センサーカメラを設置して死骸の状況と動物を撮影し、設置から3-4および8-11日後に死骸を直接観察し、死骸利用者を特定した。その結果、ライン1以北では多くの死骸がモンシデムシに埋められて加工され、繁殖に利用されていた。ライン1と2の間ではマングースの採食は観察されなかったが、モンシデムシの利用もなかった。ライン2以南では、ほとんどがマングースの採食にあった。以上のことから、モンシデムシはマングースの小動物死骸採食により繁殖資源を奪われ、地域絶滅していると考えられた。 12月に奄美大島の各地に魚肉を誘引餌とした吊り下げ式トラップとピットフォール式トラップを設置した。今後、2ヶ月に1回、捕獲虫の回収とベイトの交換を行い、1年間捕獲する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の2年目までの研究計画は、沖縄島と奄美大島のマングース生息密度が異なる地点でのネパールモンシデムシ(以下モンシデムシ)の捕獲調査の結果と、地表に置いた小動物死骸利用者の直接または間接観察結果をとおして競争排除の証明を行うことにある。このうち前年度の11月に開始し、当年度の5月まで行った沖縄島での調査では、モンシデムシはマングースの小動物死骸採食により繁殖資源を奪われ、地域絶滅していることが明確であるという結果を得た。モンシデムシの活動は秋から春であることから、奄美大島での調査は当年度12月に開始したばかりであり、結果は次年度にならないと出ないが、研究は当初の予定通り進んでいる。これまで、本研究の仮説に沿った業務を遂行し、明確な結果を得ていることから、表記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
当年度12月から開始した奄美大島でのトラップ捕獲調査を12月まで継続する。 本研究の次年度は本研究の最終年度となる。最終年度はモンシデムシ捕獲数と公表されているマングース捕獲数の関係をもとにした、マングース生息数推定モデルの開発を行うとともに、さらなる捕獲データと最新の公表データを用いて、モデルの実用性の検討を行うこととなっている。そこで、環境省にマングース捕獲データを得るための手続きを行い、データを得たのち、モデルの開発を行う。また、10月以降、沖縄島でのトラップ捕獲の再調査を開始し、最新のマングース捕獲データと、開発したモンシデムシ捕獲結果を説明変数とするモデルから得られるマングース推定生息数とを比較し、モデルの実用性の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
奄美大島での調査は、当初10月から始める予定であったが、10月末に行われる学会発表の準備と、その後発表内容に関する論文執筆のため、12月から始めることとなった。奄美大島での調査は2ヶ月に1回行うため、調査1回分の旅費およびその際に用いる経費分の残額が生じた。この残額は、次年度予定の奄美大島への出張を1回多くすることに使用する。
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