研究課題/領域番号 |
17K07868
|
研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
山川 博美 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 (00582751)
|
研究分担者 |
伊藤 哲 宮崎大学, 農学部, 教授 (00231150)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 広葉樹林化 / 自然林再生 / 前生樹 / 萌芽更新 / 保残処理 |
研究実績の概要 |
針葉樹人工林の多くが主伐期を迎えるなか、一部の人工林では広葉樹林化が試行されている。我々はこれまで、針葉樹人工林内の前生広葉樹が天然生林の再生と生物多様性の回復に重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。しかし、これらの知見は伐採直後の短期的な評価に基づくものであり、長中期的な森林動態における前生樹の貢献度は評価されていない。そこで、針葉樹人工林伐採後の天然更新に与える前生樹の影響を中期的に明らかにするため、宮崎大学田野演習林内に設置した伐採後12年が経過した試験地において、更新状況の調査を行った。本試験地は植栽木であるヒノキを伐採する際に、伐採前に通常行う下層木の刈り払いを省略(保残処理)し、可能な限り前生樹を保残した林分である。伐採前の前生樹の個体数(樹高50cm以上)は約9100個体/haで、カシ類やシイ類が生育する下層植生が発達した林分であった。伐採後1生育期を経過した段階では、前生樹の54%が生残し、26%が萌芽によって再生した。また、約47000個体/haが実生として更新していた。これらの保残、萌芽および実生の伐採12年後の個体数は、それぞれ約3200、1500および10000個体/haで、保残および萌芽個体の約3割、実生個体の約8割が枯死しており、個体の生死の面で前生樹の重要性が明らかとなった。また、保残および萌芽によって再生した個体について、伐採前の樹高に着目し生残率を計算すると、伐採前の樹高が2mを超えると生残率が高い傾向にあり、樹高2m程度以上の前生樹が重要であると考えられた。さらに、保残、萌芽および実生個体間で、現在の樹高分布を比較すると、実生由来の更新個体が低い傾向にあり、保残個体と萌芽個体では大きな違いはなかった。つまり、成長の面でも実生より前生樹由来(保残および萌芽)の更新個体の方が有利であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で予定した通り、固定試験地の復元および針葉樹人工林伐採後10年以上が経過した林分での生残状況や成長量のデータを取得することができた。また、伐採時に前生広葉樹の保残処理を行った試験地において、林分レベルでの更新状況の解析を行い、人工林の広葉樹林化における前生広葉樹の中期的な役割について評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
固定試験地の復元および樹木の更新および成長状況の調査を継続し、伐採前の前生樹量の異なる林分でのデータを取得する。また、林分レベルでのデータ解析に加え、個体レベルでの解析を行い、針葉樹人工林伐採後の樹木の更新予測モデルへのパラメータの調整を開始する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画より現地調査が効率よく進行し出張回数が少なくなったため、その分で次年度使用額が生じた。次年度は現地調査の回数が増える予定であり、旅費として使用する。
|