研究課題
(1)近畿地方における野外調査から、植物や昆虫が寄生されているように見える種を探索した。また、国内外の植物ガイドブックの写真を観察して検討した。糸状トライコームは世界のさまざまな分類群の植物に見られ、節足動物の糸擬態になっている可能性が示唆された。(2)虫こぶにはチョウ目幼虫に似た円筒形のものがあり、幼虫擬態であるかもしれない。この仮説を検証するために、都市緑地で4月に粘土で作成したモデル幼虫をサクラの新シュートのそばに設置し、その後、周辺の葉の食害を追跡した。しかし、モデル幼虫を配置したシュートにおいて、コントロール(モデル幼虫なし)より葉の食害が減少する傾向は認められなかった。野鳥がモデル幼虫を取り去ったり、人による攪乱があったことも原因として考えられる。(3)クワ科には、植食性昆虫によって食害されたかのような切れ込みをもつ葉とふつうの長円形の葉の両方を生じる種がある(異形葉性という)。切れ込みのある葉は食害された葉に擬態することにより、さらなる植食者による食害を減らしたり、アシナガバチや野鳥などの天敵を誘引して食害を減らすという仮説がある。この仮説を検証するために、京都府八幡市の宇治川河川敷でヤマグワの食害を調査した。切れ込みのある葉の比率が高い株において食害率が低い傾向があり、仮説を支持する結果であった。今後はこれが一般的なパターンであるかどうかを検討する必要があるだろう。(4)本研究の野外調査時に得られたデータから、セイヨウヒキヨモギが粘毛で寄主となるチガヤの種子を捕らえること、庭園のミューレンベルギアがバンカープラントとして有用な可能性があることを報告した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Acta Oecologica
巻: 121 ページ: 103949~103949
10.1016/j.actao.2023.103949
Entomological Communications
巻: 5 ページ: ec05023~ec05023
10.37486/2675-1305.ec05023