研究課題/領域番号 |
17K07872
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
近江 正陽 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70233020)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱処理木材 / 接着強さ / はく離 / レゾルシノール樹脂接着剤 |
研究実績の概要 |
近年、スギを高温で処理することで耐久性・耐腐朽性を向上した熱処理木材が開発され、エクステリア用木材として普及し始めている。しかし、熱処理木材の接着性や耐久性については不明な点が多い。そこで本研究では、本年度は数種の接着剤に対する熱処理木材のぬれ性を明らかにし、さらに接着性および接着耐久性を評価した。 試料はスギ(Cryptomeria japonica D. Don)無処理心材(U)および熱処理心材(熱処理条件:窒素雰囲気下・220℃・24時間、HT)を用い,接着剤は水性高分子イソシアネート系接着剤(API)、メラミン樹脂接着剤(MUF)、フェノール樹脂接着剤(PF)、レゾルシノール樹脂接着剤(RF)の4種を用いた。接着性能評価としてぬれ性(液滴の接触角)測定、圧縮せん断接着強さ試験(JIS K 6852:1999)、はく離試験(集成材JAS、平成24年)を行った。 水の接触角はUに比べてHTでは大きくなり、熱処理により木材が疎水化していることが明らかとなった。接着剤の接触角は木材表面へ液滴をドロップした直後は接着剤による差異はなかったが、時間の経過とともに変化し、フェノール樹脂接着剤のぬれ性が悪いことが明らかとなった。また、UとHTでは大きな差は認められなかった。接着強さ試験では、 HTの常態接着強さは、API、MUF、PFでUよりも小さくなり熱処理による接着強さの低下が認められた。また、APIとRFでは72時間の水中での煮沸処理により接着強さの有意な低下は見られなかった。さらに、はく離試験ではPFのHT接着においてはく離が認められ、接着耐久性が低いことが示唆された。 接着強さ試験およびはく離試験の結果から、HTの接着には接着剤により適性に違いがみられ、評価に用いた接着剤ではRFが最も適していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表的な木材接着剤のうち最も使われている4種類の接着剤についてぬれの違いおよび熱処理木材の接着性、接着耐久性が評価できた。また、実際の接着に使えうる接着剤としてレゾルシノール樹脂接着剤を選定することができた。以上の結果から、当該年度の研究目的である「熱処理木材の接着性および接着耐久性の評価」および「スギ熱処理材の被着材としての特性」についておおむね達成した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果から、熱処理が接着におよぼす影響はおおむねマイナスであることが分かった。さらに、熱処理木材の接着では接着剤により接着強さや接着耐久性が異なり、接着剤を選定することで接着が可能であり、また高い耐久性の接着も可能であることを明らかにした。 本年の研究がおおむね目標を達成したことから、次年度の研究目標は当初の予定通り木質材料を製造することとする。熱処理木材の特性を考慮し、製造する木質材料をパーティクルボードの一種である配向性ストランドボードとし、特にボード密度、含脂率、熱圧条件等の製造条件の違いがボードの製造におよぼす影響を明らかにする。
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