研究課題/領域番号 |
17K07876
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
中井 毅尚 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (90314616)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ストレス / 快適性 / 暖冷房運転 / 省エネ居住空間 / 木炭 |
研究実績の概要 |
集合住宅の天井裏への木炭の敷設が、人体へどのような影響を及ぼすか、冬期をターゲットに検証した。 3階建てRCマンション1階の角部屋でない2部屋で、1月から2月にかけて臨床試験(23:30~9:30~9:30;34時間)を行った。1部屋の天井裏には木炭を敷設し、もう1部屋には何も敷設しない状態とした。2DKのうち、1洋室+DKを臨床試験および環境測定の対象とした。天井裏・室内・床下および外部ベランダ軒先の空気温度・相対湿度を測定した。暖房は、20℃自動連続運転設定(就寝時のみoff:23:30~6:30)とした。被験者は9人の健康な成人男性でインフォームド・コンセントを事前に済ませた上で臨床試験を開始し、結腸温、皮膚表面温、心拍数、および動脈血圧を測定した。また、被験者は靴下を履いた上で、下着・ヒートテック上下・スウェット上下を着て、洋室の壁際に配し、起床時はマットレスの上に座位で、就寝時はその上に毛布と羽毛布団をかけ仰臥位とした。なお、起床後、採血(2回)を行いストレス関連ホルモンの分析を行った。 その結果、対象とした室内の温度は天井裏に木炭を敷設した部屋が高く、相対湿度は天井裏に何も敷設していない部屋が高かった。一方、血液分析の結果、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)値は、天井裏に何も敷設していない部屋に滞在したことによって約3割増加したが、天井裏に木炭を敷設した部屋では変化はほぼ認められなかった。また、コルチゾール値は両部屋ともほぼ変化は認められなかった。このことより、木炭の敷設は、暖房ON/OFFに対する人間のストレスを抑制する働きがあることが実証された。 最後に、木炭(炭化温度:780℃・800℃)の熱容量を測定すると共に、現場に近い形の試験体を用いて熱貫流率を測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「被験者の医学的根拠に基づくストレス値の評価」 予定通り、冬期の臨床実験を終え、結果も木炭敷設の有意性を証明することができた。 「温熱環境測定」 予定通り、室内空間の温度・湿度、風速、グローブ温度、日射量、消費電力量の測定、空間温度分布などの連続測定を終えた。また、被験者睡眠時において、被験者と布団との間の熱流を把握した。さらに、小屋裏(天井裏)や床下における温度・湿度測定に加え、含水率計や結露センサーによる水分量チェックを継続して行った。なお、定期的に目視によるカビや腐朽などの劣化診断を行った。 「使用する断熱材の熱特性の把握」 熱物性測定装置によりグラスウールおよび木炭(炭化温度:780℃・800℃)の熱容量を測定した。また、JIS A 4710 に対応した環境制御型ツインチャンバーにより、枠組みが軽鉄(または木材)でその一面に石膏ボードを配した内部に、グラスウールと木炭を配し、熱貫流率を測定した。
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今後の研究の推進方策 |
「被験者の医学的根拠に基づくストレス値の評価」、「温熱環境測定」、および「使用する断熱材の熱特性の把握」いずれも問題なく今年度の予定を終えることができた。実験系は確立しているので、今後、29年度と同様な手法で臨床試験を行う予定である。なお、エアコンの温度センサーの設置位置や、設定温度を変更して様々な場合を検討する予定である。
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