研究課題/領域番号 |
17K07878
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
重藤 潤 九州大学, 先端融合医療創成センター, 学術研究員 (70570852)
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研究分担者 |
中川 敏法 (中川敏法) 九州大学, 農学研究院, 学術研究員 (00734261)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心材形成 / 放射柔細胞 |
研究実績の概要 |
心材の形成は樹木の特徴であり、特に心材の美しい色と高い耐腐朽性は木材利用にとって極めて重要な考慮すべき特性である。より美しい、より耐腐朽性の高い木材を得るために心材の性質の改良が望まれている。例えばスギでは黒色を呈する異常材が現れ、その林業上の価値は極めて低いものとなってしまう。色、耐腐朽性において、有利な心材の特徴を遺伝的に改良する需要が高い一方で、心材形成関連遺伝子研究の進歩は遅れている。これらを遺伝的に改良するには、その原因物質(セイクリンC、アガサレジノールなどの重合物)の動態および、生合成される分子メカニズムを知る必要がある。 本研究は、放射柔細胞に焦点を当て、心材化(主に細胞死、心材成分の生合成、蓄積)に関与している放射柔細胞を時空間的な視点から決定し、さらに心材化制御因子のリスト化、同定を目的とした。レーザーマイクロダイセクション(LMD)法を用いれば放射柔細胞のみを単離でき、しかも放射方向に段階的に単離することが可能である。特異的または網羅的な遺伝子発現解析および代謝物解析によって、心材化に関与する候補遺伝子をリスト化後、機能検証することによって心材化制御因子の同定を試みる。 本年度は、平成29年5月に農学部附属演習林(福岡県糟屋郡篠栗町)において、心材を形成している樹齢25から40年のスギからサンプルを採取し、クライオスタットを用いた新鮮凍結薄切切片の作製条件の検討およびレーザーマイクロダイセクション装置を用いて、新鮮凍結薄切切片から切取りとった放射柔細胞から発現定量解析および代謝物解析が可能な量(面積×厚さ)について検討を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
クライオスタットを用いて樹齢25-40年の心材を形成している生木から、新鮮凍結薄切切片を作製することに成功した。しかし、29年度に予定していたLMDによって切り出した放射中細胞から次世代シーケンサーを用いた発現解析を行うのに十分な質と量を安定して確保する方法の確立には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
クライオスタットとLMDを用いたスギの盤状サンプルから必要十分量の放射柔細胞を回収するのは、労力と時間を要する作業である。この過程に時間を要することが、安定してRNAを確保できない一因となっている。安定してRNAを確保するためにはなるべく早く新鮮凍結切片作成~LMDによる切り出し過程の操作を終わらせる必要がある。そこで、テクニカルスタッフを雇用し、協力して可能な限り早くこの過程を終了させることによって研究の推進を図る。世代シーケンサーを用いた発現解析を行うのに十分な質と量を安定して確保する方法が確立でき次第、速やかに発現解析と代謝物解析に移行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数(1万円以下)が生じたため。
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