研究課題
近年盛んな遺伝子研究によって、樹木成分(主にセルロースやリグニン)の生合成メカニズムが解明され、遺伝子改変によってその質や量を人為的にコントロールしようとする試みが始まっている。一方で心材形成を制御する分子メカニズムについてはほとんど分かっていないのが現状である。この一因として心材形成が世代時間の短い草本モデル植物に見られない樹木特有の現象であることが挙げられる。心材形成制御メカニズムの解明に取り組むにあたって、心材成分が合成される舞台である放射柔細胞の遺伝子発現および心材成分変化についての情報は必要不可欠である。これまでに、辺材から心材への移行期間に発現が上昇する遺伝子についてのいくつかの報告があるが、木部を丸ごと使用しているため、心材形成に寄与しない細胞の情報が含まれる。心材形成制御メカニズムの解明には、より正確な遺伝子発現情報の取得と蓄積が要求される。また、辺材から心材へ、逆に心材から辺材への選択的、能動的な物質輸送メカニズムが存在することが示唆されているが、どのようなタンパクが関与するかなどその実態は不明である。そこで本研究では、心材化に関与する放射柔細胞と、それ以外の細胞を分離した放射柔細胞のみを対象とした網羅的な遺伝子発現解析を目的とした抽出条件の検討を行った。10 マイクロメートル厚で作成できた切片を観察すると仮道管と放射柔細胞の境目および早材と晩材の境目を区別することができたが、木片サンプル横断面の全エリアの切片を取り取れないなどし、心材および辺材の区別が付かなくなる。そこで、より狭いエリア (特定のエリアのみが含まれているサンプル)を含むサンプルの作成を試みている。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Plant, Cell & Environment
巻: 43 ページ: 315~326
10.1111/pce.13656