研究課題/領域番号 |
17K07882
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
中田 了五 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (60370847)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 辺材 / 圧ポテンシャル / 樹幹 / 水分通道性 / 樹幹含水率 / 樹液流量 |
研究実績の概要 |
屋外で成育中の成木を測定対象として三種類の樹幹水分通道特性データを得た。カラマツ、スギ、トドマツ、ミズナラ、シラカンバを対象に、樹幹含水率のモニタリングを継続した。カラマツ、スギを対象に、冬季間を除いた成長期間における樹液流量のモニタリングを継続した。29年夏から継続してカラマツを対象に、また30年春からはスギを対象に加え、辺材圧ポテンシャルのモニタリングを継続した。カラマツとスギについては、同一個体から三種類の樹幹水分通道特性データを得た。カラマツとトドマツについては、9月初旬の台風により激甚な風倒被害を被ったため、これら樹種についての測定が不可能となった。 昨年度の結果から本研究で採用した方法で辺材の圧ポテンシャルが測定可能であることがわかったため、本年度は対象樹種を増やして樹種間での差異の検討を行った。これまでのデータ解析では、スギはカラマツより圧ポテンシャルの日変動が小さいこと、気象条件等周囲環境の変動に伴う樹幹の直径変動パターンがカラマツとスギではやや異なることが示された。また、成長開始期に測定を始めることができたため、概ね一成長期に渡ってデータを収集することができた。一方、本研究の方法では樹皮を剥いで装置を設置することが必要であるが、成長が旺盛な個体では剥皮部付近からのカルスやカルスから分化した組織が剥皮部を覆うように成長することから、本研究の方法では継続的な測定期間は一成長期程度であることがわかった。 データ解析を進め樹幹含水率の変動に影響する外的要因の考察を進めた。北海道の通常の気象条件下では、樹液流量の変動は外的気象要因であるvapour pressure deficitを用いて代替可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
30年度は樹種を増やして4月、すなわち成長開始期、からの通年での樹幹含水率・樹液流量・辺材圧ポテンシャルの同時計測を行い、樹種による違いの有無を観察する計画としていた。ところが、9月に試験地を襲来した台風により供試木が風倒し測定継続が不可能になるという事件が発生した。しかしながら、蒸散および樹液流動がもっとも大きいと考えられる夏季には概ね継続してデータが採取でき、結果的に辺材圧ポテンシャルに樹種間差が認められ、今後の研究の発展につなげることが可能となったので、総合的には概ね順調という評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
30年度の研究成果として、カラマツとスギの間に辺材圧ポテンシャルとその日変動の樹種間差が認められた。31年度は辺材圧ポテンシャル測定対象として新たにトドマツを供試して、樹種による違いとその要因をさらに検討する。 樹幹含水率の季節変動と、気象要因や辺材圧ポテンシャルの季節変動との関係について解析を進める。これまで長期間にわたる観測データから、三種類の水分通道特性の季節変動の年次間差についても検討を進める。 以上のとおり、31年度は、これまでに引き続きデータの蓄積を進めることと、蓄積したデータの解析により測定法の問題点を洗い出すことにより三種類の水分通道特性測定法の確立に寄与すべく、研究を推進することとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度後半に測定器を購入して測定を開始することを計画していた供試木が9月に台風で風倒して測定が不可能になり測定器購入をおこなわなかったため次年度使用額が生じた。新規に供試木を設定できたので、31年度に測定器を購入して測定を行う計画とする。
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