研究課題/領域番号 |
17K07885
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
菱山 正二郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (00353821)
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研究分担者 |
久保 智史 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (50399375)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リグノスルホン酸 / 多糖類 / 酸加水分解 |
研究実績の概要 |
市販のリグノスルホン酸塩には、グルコース、キシロース等の多くの夾雑物の存在が示唆されるため、実験に先立ち精製を行った。まず、限外ろ過で水溶性低分子化合物を取り除いた後、イオン交換樹脂カラムを通し、4-5%濃度の精製リグノスルホン酸水溶液を調製した。このリグノスルホン酸水溶液中にはグルコース、キシロースがGCで検出できるレベルでは存在しないことを確認し、濃度調整後に各種実験に使用した。リグノスルホン酸の酸触媒としての機能を確認するために、Fisherエステル合成によるフェルラ酸のメチルエステル化による検討を行った。比較として用いた硫酸触媒では、15時間の反応でほぼすべての基質がメチル化され、TsOH、およびCSA触媒では、未反応基質が多少確認された。それに対して、リグノスルホン酸ではほぼ半量が未反応であった。40時間の反応では、 TsOH、およびCSA触媒も、ほぼすべての基質がメチル化されたが、リグノスルホン酸では、2割程度の未反応物が残存することが明らかになった。今回調製したリグノスルホン酸はエステル合成における酸触媒としての機能は有するが、比較に用いた市販酸触媒に比べて重量ベースでの能力では劣っていた。調製したリグノスルホン酸が酸触媒としての能力を持つことが明らかになったことから、セルロース、キシロースのモデルとなるセロビオース、キシロビオースの加水分解実験を行った。リグノスルホン酸が両モデル化合物に対する加水分解能を有することが確認できた。また、リグノスルホン酸によるキシロビオースの加水分解速度はセロビオースに比べて速いことが明らかになった。また、加水分解速度の違いに関連する可能性はあるが、キシロビオースの酸加水分解実験では糖類の過分解によるフルフラール系化合物の生成が確認できたが、セロビオースの酸加水分解実験ではフルフラール系化合物の生成は確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、リグノスルホン酸の糖化機能を、基質の分解により生成する単糖(グルコース、キシロース等)を定量することで明らかにすることとしている。そのためにリグノスルホン酸に不純物として含まれるパルプ原料木材由来の糖類を使用に先立ち取り除く必要がある。今研究では、限外ろ過でそれら不純物の除去が可能であり、リグノスルホン酸を実験使用できる程度に精製することができた。またリグノスルホン酸の酸触媒能を現在市販されている代表的な酸触媒と比較することができた。そのうえで、今年度の研究目標である、リグノスルホン酸の木材多糖のモデルとなる化合物の糖化能を明らかにすることができ、その中で、キシランのグリコシド結合の酸加水分解速度が、セルロースの酸加水分解よりも速いことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度に加水分解で得られる糖液からリグノスルホン酸触媒を効率的に取り除く方法の開発に取り組む。具体的には糖液中に存在するリグノスルホン酸に金属塩を加えて沈殿させるために必要な不溶性錯体形成に関する研究に取り組む。また最終的には、リグノスルホン酸の各木材に対する糖化能を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
酸触媒反応の基質の化学合成のため、海外メーカーの試薬が必要であったが、メーカー品薄のため希望量を購入することができず、実験をスケールダウンすることで対応した。次年度、再度購入を試みる。
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