研究課題/領域番号 |
17K07886
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西谷 豪 東北大学, 農学研究科, 助教 (70450781)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 渦鞭毛藻 / 貝毒 / 餌料解析 / 遺伝子 |
研究実績の概要 |
本研究では有毒プランクトンの一種であるDinophysis(ディノフィシス)を研究対象とし、DNAを用いた解析によってその餌の正体を種レベルで特定し、海洋生態系においてこれまで知られていなかった微生物食物連鎖の一端を明らかにする。それらを考慮した上で、有毒プランクトンの発生メカニズムを解明し、水産養殖業にとって重要な二枚貝類の毒化を未然に防ぐことを研究の最終的な目的としている。今年度の成果を下記にまとめた。 ・昨年度までに開発を終えたDinophysis属を対象にした餌料解析手法を他の渦鞭毛藻に適用した。従属栄養性渦鞭毛藻である夜光虫Noctilucaを対象にし、制限酵素処理法およびblocking primer法の2種類の手法をNoctilucaに合うよう再設計した。 ・上記の両手法を用いて、これまでほとんど知られていなかった夜光虫の餌生物を遺伝子解析により種レベルで明らかにした。 ・この結果を日本プランクトン学会日本ベントス学会合同大会(静岡)にてポスター発表を行った。タイトル:日本および韓国沿岸域から単離した夜光虫の遺伝的多様性 ・指導学生が夜光虫の研究について国際学会にて発表を行い、学生優秀発表賞を受賞した。学会:4th Asian Marine Biology Symposium(台湾) タイトル:Genetic diversity of the red tide-forming dinoflagellate, Noctiluca scintillans, in Japanese and Korean coastal waters
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書には下記の進行を計画していた。 1) 優占種であるD. acuminataを日本全国から採取して餌料生物を解析し、同一種でも海域や時期の違いによって餌料の種類が異なっているか 2) ディノフィシスの他の有毒種では餌料の種類が異なっているか 3) それらの餌料密度が海中でどう変動し、ディノフィシスの発生量にどう影響を与えているか 4) 最終的には、ディノフィシスの発生時期や規模が事前に予測可能かどうかを検証する 研究計画当初から予定していたDinohysis属のサンプルが入手できなかったため、やむを得ず同じ渦鞭毛藻の夜光虫の餌料解析へと切り替えて開発・解析した。結果として夜光虫の餌料解析に成功したが、本来行うべきDinophysisの解析ができていないため、「やや遅れている」と判断する。プランクトンは毎年同じ場所同じ海域に出現するわけではないため、サンプリングが困難な場合もあるが、引き続きDinophysis属の細胞をサンプリングすることを試みる。
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今後の研究の推進方策 |
本来の目的であるDinophysis acuminataは毎年、初夏に出現する可能性が高い。そこで今年度の初夏にサンプリングを行い、確立した手法を用いることによって、餌料生物を解明する。また、餌料生物が明らかになり次第、現場水中における餌料生物の密度を測定し、捕食者(Dinophysis)との関連性を明らかにする。 また、同じ渦鞭毛藻である夜光虫はDinophysisよりも入手できる可能性が高いため、夜光虫の餌料解析についても引き続き調査を行ない、Dinophysisとの食性を比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰り越した理由は、研究を遂行する上で当該年度に使用する物品は必要十分に購入でき たこともあり、余った金額を無理に使用せず、翌年度へ繰り越したためである。繰り越した予算は翌年度において遺伝子解析関係の消耗品を購入する予定である。
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