研究課題/領域番号 |
17K07887
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三野 義尚 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 助教 (20362303)
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研究分担者 |
鋤柄 千穂 東京海洋大学, その他部局等, 特任助教 (90447128)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 亜寒帯植物プランクトンのPSII光損傷リスク |
研究実績の概要 |
JAMSTECの海洋地球研究船「みらい」による調査航海MR18-04(7月19日~8月10日)に参加し、西部北太平洋の天然植物プランクトン群集を対象とした船上実験を実施し、光化学系IIの光不活性化特性について検討した。観測点は、北緯50~10度の海域で、亜寒帯定点K2だけでなく、亜熱帯の複数の観測点で採取した天然プランクトン群集を対象にして、短時間の強光応答について調査した。具体的には、表層水中のプランクトン試料に強光条件(白色光源)を与え、光化学系IIの最大量子収率(Fv/Fm)の短時間変化を高速フラッシュ励起蛍光法によって追跡した。実験から得られた光不活性化パラメータは、亜熱帯よりも亜寒帯プランクトンの方が低い値を示し、光化学系IIの光損傷リスクが小さいことが判った。この理由として、細胞内色素のパッケージ効果により光捕集能力が小さいこと、代替的電子伝達反応(AEF)を介したエネルギー消費が活発な点などが考えられる。実際に亜寒帯プランクトンはPTOXを阻害するとFv/Fmが有意に減少した。一方、亜熱帯プランクトンに対するPTOX阻害実験はうまくいかなかった。あらためて、天然プランクトン試料を対象にする場合は、阻害剤の種類および添加量などについて慎重な検討が必要なことが判った。AEFの多くは酸素が電子受容体になるため、特定の酸化酵素の阻害実験だけでなく、貧酸素化実験にも取り組むことが必要なのかもしれない。このように再評価したAEFによるエネルギー消費と、対象プラクトンの光合成タンパク質組成の分析結果を合わせることで、研究海域の光・栄養塩環境への主要プランクトンの順化と光防御戦略との関係について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
亜熱帯と亜寒帯プランクトンのAEF活性を比較することで、光防御機能の違いを明らかにすることを目論んでいたが、実験手法の再検討が必要なことが判明した。陸上での藻類株を用いた実験等によって、これまでの結果の妥当性を検証する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
分担研究者所属先(東京海洋大学)の藻類研究者に協力を仰いで、上記の検討実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたよりも分析消耗品が少なかった。この分の経費は次年度の試料分析の消耗品費に充てる予定である。
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