研究課題/領域番号 |
17K07891
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
高橋 文雄 立命館大学, 生命科学部, 任期制講師 (60332318)
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研究分担者 |
紫加田 知幸 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 研究員 (40603048)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 赤潮藻類 / シャットネラ / Aureochrome / 青色光受容体 |
研究実績の概要 |
沿岸域において有害赤潮の原因となるラフィド藻は、遊泳によって昼間表層に集積して光を浴び、光合成を行って細胞分裂(増殖)する。この特性が赤潮形成を促進すると考えられているが、遊泳や細胞分裂に及ぼす詳細な光環境の影響やその分子機構は詳細不明である。現在までの研究により、ラフィド藻において、細胞分裂や遊泳運動(日周鉛直運動)は、光(波長不明)によって制御されること、他の藻類で青色光を特異的に受容し、重要な生理反応を誘導する青色光受容体オーレオクローム(Aureochrome)を保持することがわかっている。本研究では、ラフィド藻シャットネラにおけるオーレオクロームの機能、特に細胞分裂および遊泳運動への関与を明らかにすることを目的としている。 本年度は、ラフィド藻シャットネラの細胞分裂の日周性に着目し、分裂時期の特定を行った。その結果、明暗周期の暗期に転換する時間に細胞分裂が盛んになっていることがわかった。また、その光の波長特性は青色と赤色で誘導されていることもわかった。さらに、DNA合成期の特定を行った結果、明期開始からG1/S(DNA合成)の移行が確認された。 一方青色光受容体オーレオクロームの生化学的解析に着手し、シャットネラのmRNAを鋳型にタンパク質発現用のベクターを構築し、大腸菌によるタンパク質の発現を行った。シャットネラのオーレオクロームは、大腸菌のコドンに合わず発現タンパク質の精製量が少量であった。そのためオーレオクローム遺伝子のコドンを大腸菌用に変換させ、発現誘導を行ったところ、可溶化タンパク質が多量取得可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、初年度は、ラフィド藻類シャットネラの細胞分裂の光依存性と明暗周期の分裂周期の特定を行った。光依存性に関しては、予想外であったが青色光以外に赤色光にも効果が見られた。また分裂周期のDNA合成期が非常に長いことや光依存的に起こることもわかった。 2、光による細胞分裂や運動性を担うと考えられる青色光受容体オーレオクロームが6種類あることがわかっており、それらの発現タンパクを取得し生化学的特性を確定するべく、大腸菌での発現系の構築を行った。
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今後の研究の推進方策 |
1、細胞分裂周期の光依存性が観察されたことから、今後シャットネラ発現データベースを用い、細胞分裂に関わる因子(サイクリン等)の同定や経時的なmRNAの発現をreal time PCRを用いて解析する予定である。 2、青色光受容体の発現タンパク質が得られたので、光受容能やDNA結合能を解析する予定である。 3、珪藻の形質転換系をベースとしたシャットネラ形質転換方法の調整を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度を通しての進捗は概ね想定通り進んだが、前期細胞分裂などの生理応答解析について重点的に研究を行ったため、次年度使用額が生じた。分子生物学、生化学などの解析は次年度以降の課題になり、今年度はreal time PCRや形質転換用のベクターなどを構築する予定なので、それらの消耗品に充当する予定である。
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