研究課題/領域番号 |
17K07891
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
高橋 文雄 立命館大学, 生命科学部, 講師 (60332318)
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研究分担者 |
紫加田 知幸 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 主任研究員 (40603048)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オーレオクロム / 赤潮 / シャットネラ |
研究実績の概要 |
黄色植物門に属するラフィド藻シャットネラ(Chattonella)は、赤潮の原因藻類の1種で、光依存的な増殖(細胞分裂)や日周鉛直運動が観察される。夏季沿岸部において、富栄養化が進み前述の二つの反応が組み合わさると、赤潮となる。赤潮が形成されると、それらを吸い込んだ魚類は、呼吸等に支障をきたし、死に至る。本課題では、ラフィド藻を含む黄色植物門が保持している青色光受容体オーレオクロムがどのように上記の反応を含む赤潮形成機構に関与するか、詳細に解明することが大きな目的である。 本年度は、光依存的な上記の素反応の光受容機構を解明するために、光受容体オーレオクロム遺伝子の破壊実験を行うことを試みた。前年度まですすめた遺伝子導入実験のための基礎知見がさらに得られた。遺伝子導入のためには、電気的刺激を用いるエレクロポーレーションが必須であるが、海産の生物の培養には、高濃度の塩を必要とすることからこれらを除去し、さらに生育可能にしなければならない。そのため本研究では、培養液中の塩を糖へ置換を試み、細胞の生育条件を前年度の薬剤耐性とともに調査した。その結果、直接的に糖への置換は細胞のダメージは大きかったが、段階的に塩から糖アルコールへの置換を行うことで細胞が生存しうることを見出した。加えて、マイクロインジェクション(顕微注射)による遺伝子導入法を確立するために、運動能を欠損した細胞(シスト細胞)の培養を試みた。低温や光条件を変更して培養したことにより、シスト前駆細胞が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
赤潮藻シャットネラ細胞への遺伝子導入・破壊技術に関して、基礎的な知見は得られてきているが、細胞に遺伝子が導入された実績は得られなかった(珪藻等で用いられている遺伝子導入ベクターを用いたが耐性やGFPの発現も観察されていなかった)。生理的な条件だけでなく分子生物学的な方法の改良が必須であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
dsRNAを作製しそれらを細胞内に導入し、RNAiによるノックダウン解析を行う予定である。また前年度に実績が得られなかった珪藻発現ベクターを用いた解析については、発現ベクターのプロモーター配列(シャットネラ由来)の取得を実施し、ベクターの再構築を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度、遺伝子導入解析まで行う予定であったが、薬剤耐性、培養条件等の安定化に時間を要し、遺伝子導入まで至らなかった。そのため分子実験で用いる予定であった予算を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。 生じた予算によって、赤潮藻類シャットネラ細胞の遺伝子導入方法の開発を行う。そのためにベクター再構築用のプロモーターの単離やdsRNA作製に関わる分子生物学的消耗品に使用する予定である。
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