黄色植物(光合成ストラメノパイル)に属するラフィド藻シャットネラは、沿岸域での大量増殖によって、赤潮を形成し、魚類にたいして甚大な被害を与えることが知られている。この赤潮形成のメカニズムは、細胞分裂と集積を伴う日周鉛直運動が大きな要因とされている。この二つの現象は、光によって制御されているという報告から、光合成や光受容体の関与が示唆されている。本研究では、この光依存的な赤潮形成を生理・分子生物学的に解くことが大きな目的である。 今年度は、昨年度から引き続きシャットネラの分子遺伝学的手法の確立を目指した。また日周鉛直運動の詳細な解析を行うために、鞭毛の形態や鞭毛関連因子のついてトランスクリプトームデータを用いて、関連因子の有無を調査した。 まず、形質転換技術の開発に向けて、シャットネラ細胞の脱塩溶液からの復帰と珪藻GFPベクターを用いた一過的発現を試みた。シャットネラ細胞は、脱塩溶液では形態を変化させ、球形になったが、海水による復帰を試みると、鞭毛が伸長し、通常の形態に戻った。エレクトロポレーションにより、遺伝子導入が可能であると考えられた。しかしエレクトロポレーションによる珪藻GFPベクターの導入実験では、GFPの蛍光は観察されなかった。 次に日周鉛直運動に重要と考えられる鞭毛の形態や鞭毛因子について、解析を行った。鞭毛は暗所で長くなる傾向であった。また他の藻類や鞭毛を持つ生物が持つ因子を、シャットネラは保持していることもわかった。
|