本年度は、前年度にハプト藻および珪藻由来有機物を用いて行ったマイクロコスム実験において取得した核酸試料の微生物群集構造解析並びに蛍光性溶存有機物 (FDOM) 解析を実施した。さらに、マイクロコスム実験で取得した核酸試料に対して、ショットガン法を用いたメタゲノム解析を実施し、微細藻類由来の有機物の添加に対する微生物代謝遺伝子の変動解析を実施した。これらの結果から、ハプト藻および珪藻由来有機物を添加した処理区では、それぞれ異なる微生物代謝遺伝子が卓越することが明らかとなった。FDOMの解析結果から、ハプト藻添加区では、タンパク質様Bの蛍光値が培養後で減少する傾向が見られたことから、これらの物質が分解されていることが示唆された。一方で、ハプト藻および珪藻有機物の両添加区で腐植様物質Cの蛍光値がわずかに増加していたことから、海洋性微細藻類由来の有機物を源として、腐植様有機物が生成された可能性が示唆された。 また、微細藻類細胞内の有機物に対して、細胞外に放出される有機物に対する微生物の応答を解析するため、新たにマイクロコスム実験を実施し、FDOM並びに微生物群集の変動解析を実施した。これらの結果から、特定の海洋微生物がタンパク質様物質だけでなく、腐植様物質の分解にも寄与している可能性が示唆された。 単離菌株および珪藻由来の溶存有機物を用いた培養実験に関しては、培養株の前培養中にコンタミネーションが起こったため、実施することができなかった。
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