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2019 年度 実施状況報告書

有害プランクトン発生の潜在的リスク評価のための休眠細胞定量技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K07899
研究機関国立研究開発法人水産研究・教育機構

研究代表者

坂本 節子  国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 主任研究員 (40265723)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード海洋環境保全 / 有害有毒プランクトン / シスト(休眠期細胞) / 定量PCR / 赤潮
研究実績の概要

本研究では底泥中のシスト量から潜在的な有害プランクトンの発生リスクを評価するための手法の確立を目指している。底泥中に存在するプランクトンの休眠期細胞(シスト)の存在量をより簡便,正確に把握することを目的として,シストのrDNA量を基に定量PCRにより定量方法の開発を進めてきた。加えて,シストの生理状態,すなわち発芽のタイミングや内的休眠解除の状況を把握するために,休眠や発芽に関与する発現遺伝子を明らかにし,その発現量を定量する方法の開発を目指している。
今年度は,有毒渦鞭毛藻Gymnodinium catenatumのシストの休眠から発芽の過程に関与する遺伝子群を明らかにするための基礎データとして,培養株より得られたシスト(内的休眠から発芽直前の異なる生理状態のシストの混合試料)のmRNA-Seq解析により得られた全配列の機能解析を進めた。得られた116,244コンティグ配列(最小224bp, 最大17,904bp, 平均821 bp)をもとにTrinity解析により,79,840トランスクリプト配列を得た。このトランスクリプト配列についてblastxを用いた相同性解析を実施し,各トランスクリプト配列の機能を調べた。その結果,得られたトランスクリプトの65.8%に当たる52,534配列にアノテーションが付いた。しかし,そのうちの約12,500配列は渦鞭毛藻Symbiodinium属等の遺伝子と相同性が高いが機能が不明な遺伝子,あるいは既報の情報がないタンパク質と推定される配列であった。シストの発芽の促進には光や酸素が関与しているが,シストの発現遺伝子には青色光受容体や低酸素環境下で標的遺伝子の転写活性制御因子となるHIF-1A遺伝子などの機能遺伝子が含まれていた。また,定量PCRの際に細胞あたりの発現量比較に利用可能なハウスキーピング遺伝子としてGAPDHやHPRT1の配列も得られた。今後,シストと栄養細胞とで遺伝子の発現量を比較することでシストの生理状態を示すマーカーを絞り込むための基盤ができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

今年度は,前年度までの研究で遅れていたG.catenatumのシストの発現遺伝子解析に注力し,多くの機能遺伝子を同定するとともに,配列データベースを作成できた。また,発現遺伝子からシストの発芽に影響すると考えられる光捕集や底泥中の低酸素下での遺伝子発現に関わる機能遺伝子配列などを得ることができた。しかしながら,このような解析を初めて実施することから,解析に時間がかかってしまい,本研究の申請当初に計画していたmRNA発現遺伝子の定量PCRの作製や,シスト試料の定量的なRNA抽出方法の検討の実施には至らなかった。

今後の研究の推進方策

本研究の進捗状況は申請当初の計画よりも遅れていることから,研究計画の変更が必要と判断し,次年度は下記の課題に集中して取り組みたい。特に,シストから得られた発現遺伝子の情報は今後の研究を進めるうえで基盤となることから,さらに詳細な解析を進める。また,rDNAによるシスト定量法については現場試料を用いて定量法の実証を進める。
1.現場底泥試料からのDNAの抽出と定量PCRの実施:これまで採集した底泥試料を用いてシストの定量を試みる。
2.G. catenatumのシストから得られた発現遺伝子の公開に向けたデータベースの作成およびGO解析などによる栄養細胞の発現遺伝子との比較:シストから得られた発現遺伝子については遺伝子データベースでの配列公開に向けてデータベースを作成するとともに,すでにGenBankで公開されている栄養細胞の発現遺伝子との比較解析を試みる。

次年度使用額が生じた理由

調査のための旅費を計上していたが,他の事業課題との合同調査となったため,旅費は事業課題から支出することとなったため残額が生じた。残額については発現遺伝子解析および今後データベースを作成するため,現在,基礎生物学研究所の研究者に協力を仰いでおり,その打合せ旅費に充てたいと考えている。また,今年度はRNAの発現定量分析の検討を進めることができなかったため,消耗品,特に試薬の購入を進めることができなかった。次年度は現場試料の分析を進めるため,分析試薬が多く必要になることが予想されるため,その費用に充てたい。さらに,研究の進捗が遅れていることから,研究の1年延長も視野に入れて今後の使用計画を考える。

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公開日: 2021-01-27  

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