研究課題
本研究の目的は、海鳥類を介した汚染物質輸送が陸上生態系に及ぼす影響を評価することである。海洋生態系の高次捕食者である海鳥類は、高濃度に汚染物質を蓄積していることで知られている。そして、体内に蓄積した汚染物質を繁殖行動(自身と子への餌獲得のために餌場である海域と繁殖地を往復する)や渡り行動(通常春秋に見られる繁殖地~越冬海域の長距離移動)を通じて海域から陸上へ輸送している。海鳥類は特に移動性が高く、長距離輸送をしている可能性が指摘されているが、これに関する知見や情報が乏しいため、どの海域からどの経路で汚染物質が陸上に持ち込まれているかは不明のままである。2017年は本研究の初年度にあたり、4月末から7月上旬にかけては北海道天売島で、5月末から8月上旬にかけてはアラスカ州ミドルトン島で野外調査を実施した。それぞれの島で繁殖するウミスズメ科鳥類のウトウにジオロケーター(小型位置記録計)を装着して放鳥し、ジオロケーターを装着しない個体から安定同位体比分析用と汚染物質濃度分析用の血液、羽根、糞のサンプルを採取した。また、陸上生態系への影響を評価するため、営巣場所内及び隣接する非営巣場所において土壌と植物、コアサンプル(堆積物、直径3cmの円筒状に土壌表層から20cmを採取)を採取した。その結果、利用した越冬海域によってウトウの羽根中の汚染物質濃度が異なり、非繁殖期(越冬期)の行動が汚染物質暴露に影響を及ぼしていることが示された。
2: おおむね順調に進展している
予定通り野外調査を実施して記録計の装着やサンプル採取を実施し、データ解析を進めることができた。しかし、ミドルトンで採集したサンプルについては化学分析の実施が予定よりも遅れているが、2018年4-5月に実施予定であある。
野外調査によるサンプル収集およびデータ解析は順調に進展しているので、引き続き行い、2018年度はデータロガーの回収につとめる。また、化学分析も実施する。
2017年度中に行う予定だった汚染物質分析が2018年度に行うこととなったため。
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