研究課題/領域番号 |
17K07905
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
片桐 孝之 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (50361811)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ローズマリー / ダクチロギルス / コイ / 駆虫 |
研究実績の概要 |
昨年度、ローズマリー水抽出液80 mlと市販飼料100gを混合し、成型して凍結乾燥したものをダクチロギルスに感染しているコイに経口投与したところ、20日間の連続投与ですべての寄生虫を駆虫することができた。このように駆虫効果が確認されたことから、同飼料を用いた感染予防効果について検討した。 ダクチロギルスに重度に感染しているコイの飼育水槽から、非感染のコイを飼育している水槽に注水を行って感染モデルとなる装置を設置した。ローズマリー水抽出液60 mlと市販飼料100gを混合して上記のように非感染のコイに給餌して対照飼料との比較を行った。28日後、鰓に寄生している虫体をカウントしたところ、両区において有意な差は認められなかった。この飼料中の1, 8-Cineole量をGC/MSで定量したところ、投与飼料中の1, 8-Cineoleがほぼ含まれていないことが明らかとなった。このことが感染予防効果の見られない理由であり、駆虫効果に重要となる同物質は、凍結乾燥や保存期間中にほぼすべて揮発したためと考えられた。 次いで、テルペン類が高濃度で回収できる75%エタノールによる抽出物と市販飼料を混合した餌投与による駆虫効果について検討した。エタノール抽出液5、10、20 mlと粉砕した100gの市販飼料を混合し、そのまま粘土状に丸めてダクチロギルスに重度に感染したコイに凍結乾燥や保存をせずに給餌した。10、20、28日後、鰓に寄生している虫体をカウントして比較した。対照飼料を給餌したコイの28日後の感染寄生虫数は、およそ80%に減少していたが、3種類の上記飼料を給餌したコイの10日後の感染寄生虫数は、すべて60%程度まで減少しており、28日後には、10%程に減少していた。これは、水抽出液と比較しても高い駆虫効果であり、飼料と混合するエタノール抽出液も少ないことから扱いやすい利点があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ローズマリーの水抽出液と混合した飼料にダクチロギルスのコイへの感染予防効果が認められず、その理由が明らかとなった。Zoral et al. (2017)で報告しているように、1, 8-Cineoleを含むテルペン類は、エタノール抽出液に多量に含まれており、水抽出液を比べて、少量の使用で駆虫効果が明らかとなり、飼料調整も容易となって利便性に優れている。
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今後の研究の推進方策 |
ローズマリーのエタノール抽出液と混合した飼料にダクチロギルスのコイへの治療効果が認められたことから、同飼料の感染予防効果について、検討する。ダクチロギルスに重度に感染しているコイの飼育水槽から、非感染のコイを飼育している水槽に注水を行って感染モデルとなる装置を設置して飼育実験を行い、30日後の虫体数を比較して効果を明らかにする。また、飼育期間中に経時的に体表粘液と血液を採取して、それらに含まれる1, 8-Cineoleの濃度をGC/MSで定量して、濃度と虫体数の関係を明らかにする。 マダイあるいはキンギョにそれぞれ感染する白点虫あるいはマダイに感染する繊毛虫スクーチカに感染予防あるいは駆虫効果があるのかどうかを検討する。また事前に行ったin vitroの予備実験において、コイに感染するトリコジナやチョウに対しては殺虫効果は認められなかった。このことも加味し、最終的に様々な魚種と寄生虫の組み合わせモデルを通して、ローズマリーエタノール抽出液の効果を総合的に判断したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定した物品費の購入を行わず、現有しているもので研究を進めることができたためである。一方、次年度は、飼育実験や分析に使用する多くの消耗品を購入する予定であり、適正使用を見込んでいる。
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