研究課題/領域番号 |
17K07906
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
古屋 康則 岐阜大学, 教育学部, 教授 (30273113)
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研究分担者 |
山家 秀信 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (40423743)
松原 創 金沢大学, 生命理工学系, 教授 (50459715)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 硬骨魚類 / 生殖生理 / 繁殖行動 / 生殖周期 / 腎臓 / 営巣 / ムチン |
研究実績の概要 |
本年度はトミヨ属淡水型を対象とした生殖周期に伴う腎臓組織の変化と雄による雌誘引作用に関する行動実験、カジカ科魚類を対象とした腎臓でのスピギン相同遺伝子の発現とスピギン相同タンパク質に対する交代の作成、ナマズ科魚類を対象とした生殖周期に関する情報収集を実施した。 トミヨ属淡水型の雌雄の成熟度をそれぞれ4段階に分類した。雄の腎臓は精子形成中には小さく、機能的成熟期に入ると急激に肥大したが、繁殖期終盤には急激に退縮するといった、成熟度の進行と一致した変動を示した。腎臓の大きさの変動と一致して、近位尿細管と集合管の上皮細胞は機能的繁殖期に著しく肥厚し、近位尿細管の上皮細胞がPAS染色に陽性を示すようになった。以上より、トミヨ属魚類では繁殖期の雄の腎臓の尿細管上皮が肥厚し、スピギンと思われる多糖類を含む物質が合成されていることが示唆された。雌誘引作用に関する行動実験については、本年度は実験設備の確立に重点を置いた試行を行った。設備はほぼ確立でき、水槽内で営巣活動を行わせることにも成功した。繁殖期に雌の行動実験を実施したが、雄あるいはスピギンが付着した巣が雌を誘引する作用を持つという証拠は得られなかった。今回の実験条件(実験の時期、用いた雄と巣の数、水槽水の容量)から、スピギンの雌誘引作用が観察結果に反映されなかった可能性も考えられるため、次年度に再実験を行う必要があると判断した。 カジカ科魚類の研究では、昨年度に明らかにしたカジカ・スピギン遺伝子の塩基配列から、カジカ・スピギンはムチンファミリーに属する糖タンパク質であること推定された。塩基配列情報を基に、ペプチドを合成し、このペプチドに対する抗体を作成することができた。ナマズ科魚類として営巣繁殖するアカザを対象に過去の採集サンプルの解析により、雌雄の成熟度をそれぞれ3段階に分類した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トゲウオ科に関しては実験魚をイトヨからトミヨ属淡水型へと変更したため、生殖周期に関する基礎情報収集からの実施となったが、成熟に伴う腎臓の変化に関して順調に結果が得られた。行動実験に関しては水槽内での営巣と、雌の行動実験の設備・方法を確立できたことは大きな成果である。残念ながら本年度は予想していたような結果が得られなかったため、次年度に再実験を行う必要が生じた。また、カジカ科に関しては当初の予定通り塩基配列情報から抗体の作成までを行うことができた。 本年度に予定していたナマズ科魚類を用いた実験については、アカザを用いて過去の採集データから生殖周期に関する情報を得たが、営巣による尿量の増加や腎臓の変化については次年度に持ち越すこととした。本年度に予定していたハゼ科魚類ヌマチチブを用いた尿中の成分分析についても、次年度にアカザとともに実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
トゲウオ科トミヨ属淡水型を用いた行動実験については、実験時期を繁殖期の初期からの実施とし、使用する雌の成熟状態や刺激液(雄と巣が入った水槽水)の濃度に関して改善した実験を実施する予定である。カジカ科については、カジカ小卵型を用いて、本年度に作成した抗体を用いた免疫学的な解析(免疫組織・免疫電気泳動など)により、スピギンの存在部位を特定し、当初の仮説である腎臓での産生・膀胱内での蓄積の証拠を得る予定である。 ナマズ科を用いた研究については、アカザを対象魚種として、繁殖期を中心とした腎臓組織や営巣による尿量についての変化を明らかにし、多魚種との生理学的な相同性を検討する。また、ハゼ科のヌマチチブとともに、これまでに集めた尿のサンプルを基に、成分の分析を進める。アカザとヌマチチブについてはスピギン相同遺伝子の探索、発現解析、抗体作成、免疫学的解析も同時進行で進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
行動観察の実験に用いた魚類サンプルの飼育や実験後の標本作製処理のための消耗品費として使う予定であったが、実際には予想していたほどの数のサンプルが得られなかったため、残額が生じた。今年度はより早期から行動実験を開始することで、前年よりもも多めのサンプルを採集し、飼育・処理することで繰り越した予算を消費する予定である。
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