研究課題/領域番号 |
17K07907
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
青木 恭彦 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 教授 (00212366)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 単離・精製法 / 陰イオン交換カラムクロマトグラフィー / シアル酸 |
研究実績の概要 |
平成29年度実験計画におけるグリコホリン中の糖鎖の回収率の改良法を開発する計画は、おおむね順調に進展していると判断できる。すなわち、当初は糖タンパク質の糖鎖に注目してレクチンカラムで単離・精製を試みたが、レクチンへの糖鎖の吸着が予想以上に強力であるため溶出法を見出す事が出来なかった。そこで無理に界面活性剤で糖鎖を溶出させても、280 nmに吸収を有する界面活性剤が多くモニタリングが不可能であった。そののため、次の方法としてグリコホリンを界面活性剤で可溶化させた後に、グリコホリンのタンパク質部の荷電を用いて陰イオン交換カラムに吸着させ、次いで界面活性剤とNaClを用いて溶出を行った。その結果、グリコホリン以外の膜タンパク質は除去され、グリコホリンのみの画分が得られた。 本方法によりシアル酸量でみた回収率は約1%以下から約100%となり、大幅な改善が認められた。この成果は、糖鎖を含むタンパク質においても、糖鎖に注目せずにタンパク質に注目して精製を行ったところに学術的意義が認められると判断した。 一方、学術雑誌 Membraneに今までの24年間に亘る研究から得られた知見をReviewとして発表することが出来た。今までの糖鎖研究は、タンパク質やポリフェノールなどの有機化合物と比較すると、糖鎖には異性体や結合方式などが多数存在して構造解析が格段に複雑であり、構造解析の報告に関しては数が少ない。この分野の研究の進展に本研究が一例となって、糖鎖の研究が一層発展する事が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初実験計画案では、平成29年度中にグリコホリン中の糖鎖の回収率の改良法を開発する計画であった。そこで、グリコホリン単離法(精製法)を今までの抽出法を止めてカラムクロマトグラフィーによる単離法に切り替えて種々試行錯誤を行った結果、レクチンカラムでは上手くいかなかった反面、グリコホリンのタンパク質部の荷電を利用した陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによって糖タンパク質の精製に成功した。これにより回収率は、約1%以下から約100%と、大幅な改善が認められた。以上の結果より、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。一方、NaClを用いて遊離・回収したために、平成30年の計画では、優先的に脱塩法の開発を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
グリコホリンのタンパク質部の荷電を用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによって糖タンパク質の精製に成功した。一方、NaClを用いて遊離・回収したために脱塩法の開発を行わなければならなくなった。通常の脱塩カラム法ではNaClと糖鎖の分子量が近くて利用できないため、活性炭カラムによって糖鎖画分の脱塩を図る。 平成30年度は、脱塩法の開発と併せて、グリコホリンによる環境浄化力の検討を行う予定である。すなわち、調製したグリコホリンのタンパク質部をホルミルセルロファインゲルにカップリングさせてアフィニティーカラムを作成して、種々の細菌をカラムに通過させて吸着能を測定する実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)グリコホリン調製実験において、使用するレクチンカラムの必要量が当初の計画よりも少なく済んだため(高額なレクチンでは上手く分離できなかった)。
(使用計画) 30年度以降に行うオリゴ糖鎖含有塩画分からの脱塩法の開発に使用する予定である。
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