研究課題/領域番号 |
17K07907
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
青木 恭彦 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 教授 (00212366)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グリコホリン / 抗菌性 / 魚病 / 創薬 |
研究実績の概要 |
当初計画していた実験は順調に進み、平成30年に行う計画であるビブリオ病に罹病したニジマスに対するコイグリコホリンの有効性の実験の実施が完了した。これは、魚病の病原菌 (ビブリオ病の病原菌であるVibrio anguillarum)を接種して罹病させたニジマスに、グリコホリンを直接血管内に投与し、生存時間をコントロール(生理食塩水投与)と比較して魚病治癒力を検証したものである。この結果から、コイ赤血球膜に含まれる糖タンパク質であるグリコホリンが、コイ血中に侵入した病原菌に対して抗菌活性を発現して病原抵抗性を示すのみならず、魚種の異なるニジマスにおいてもコイグリコホリンの有効性が確認できた。この事は、コイグリコオリンがニジマスだけではなく、他の動物種にも抗生物質として応用が可能であることを強く示唆するものである。この結果を纏めて、2018年8月にベルリンで行われた国際学会(2ndInternational Conference & Expo on Pharmacology and Regulatory Affairs)にて発表(E-ポスター)を行った。この発表内容は広く注目を呼んだようで好意的な評価を得たためか、別の国際学会(BIT's 17th Anual Congress of International Drug Discovery Science and Technology)において招待講演の依頼を受けたため、2019年7月に京都で発表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に進展しているために、結果をまとめて国際学会で発表することが出来た。その理由として、第1にコイグリコホリンの大量調製法が確立できた事、第2にニジマスでの血管内投与実験について過去に経験を有していたことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度で確立したコイ血液からのグリコホリンの精製法を用いて、他の魚種やヒト血液でも応用が可能であるかを検証する。用いる検体は、海産赤身魚としてブリ血液、海産白身魚としてタイ血液およびヒト血液を予定している。血液をFicoll-Paque PLUSを用いて血漿および白血球を除去した後、希薄溶液にて溶血後遠心分離を行って赤血球膜を調製する。得られた赤血球膜を平成29年度で確立したコイ血液からのグリコホリンの精製法を用いてグリコホリンを単離し、単離したグリコホリンの精製度をSDS-電気泳動を行って検討する。グリコホリンの構成タンパク質をクーマシーブルー染色によって検出し、同時にPAS染色によって糖鎖の位置を確認する。もしグリコホリンが精製されているのであれば、SDS-ポリアクリルアミドゲル上で両者のバンドが一致することとなり、上記開発した調製法がコイのみに係わらず他の血液にも応用が広がると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度で確立したコイ血液からのグリコホリンの精製法の収率が、従来の約2%弱からほぼ100%に改善された事から、今までの採血50回分が1回の採血で完了することとなった。そのため使用する試薬・消耗品類が当初の計画よりも少なく済んだため、平成31年度に行う実験では、コイ血液からのグリコホリンの精製法を用いて他の魚種やヒト血液においても応用が可能であるかどうかのを検証実験を行う予定である。
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