研究実績の概要 |
平成29年度は,日本の温帯域の潮間帯でよく見られる有節サンゴモのピリヒバ(後述)と,無節サンゴモのヒライボについて実験を行った。いずれの種も広島県竹原市沿岸で採集した藻体を用いた。 ヒライボの実験では,発芽体の成長に及ぼす水温,光量,栄養塩の影響を調べた。胞子を単離して約2週間後の発芽体を用い,水温実験は光量100 umol photon/m2/sで,水温を10,15,20,25,30,35℃の6段階,光量実験では,水温20℃で,光量を1,5,10,50,100,200,400 umol photon/m2/sの7段階にそれぞれ設定し,天然海水を用いた。栄養塩実験では,光量100 umol photon/m2/s,水温20℃に設定し,硝酸ナトリウムを除いた1/10PES培地を添加した人工海水(硝酸塩を含まない)に,硝酸ナトリウムを0, 0.1, 0.5, 1, 5, 10, 25uMの7段階で加えた海水を用いた。いずれの実験も明暗周期を12時間とした。実験期間は4週間で,成長率は発芽体の表面積により評価した。水温実験での日間相対成長率は,10℃から20℃にかけて0.06-0.72%に増加し,25, 30℃では,0.30-0.40%,35℃では2週間ですべての個体が枯死した。そのため,本実験でのヒライボの生育適温は20℃であった。光量実験では,日間相対成長率と光量の関係をPlatt et al. (1980)の方程式に基づいて曲線近似したところ,飽和光量は106.8 umol photon/m2/sと見積もられた。この飽和光量以上では,成長率が下がる強光阻害が見られた。栄養塩実験では,日間相対成長率と濃度の関係をMonod growth expressionで曲線近似したところ,飽和には至らず,最も高濃度の25uMで最大の成長率となった。
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