研究実績の概要 |
本研究では、ブリ類に安全性と摂餌性が確認されているシアノアクリレートナノ粒子 (acrNP) の予防効果と治療効果について調査した。まず予防効果では、本ナノ粒子添加飼料を30日間連続的にブリに給餌し、1週間馴致を行った後に実験感染試験を実施してノカルディア症感染に対する効果を調べた。その結果、最終的な生残率が本ナノ粒子1,000ppm区で100%、対照区で86.4%であり、ナノ粒子区では全く死亡は確認されなかったが、両試験区の間で有意な差異は認められなかった。 次に本ナノ粒子の治療効果について検討した試験では、実験感染魚のブリに対して本ナノ粒子1000ppmを経口投与ならびに注射投与した。その結果、最終的な生残率は本ナノ粒子経口投与区で93.3%、本ナノ粒子腹腔内注射投与区86.7%、対照区で66.6%であり、試験開始21日後の本ナノ粒子経口投与区および本ナノ粒子腹腔内注射投与区と対照区の間で有意な差異が認められた。本ナノ粒子の実用化に向けて、効果的な投与方法の検討が必要であり、本研究では以下3つの試験について調査した。 まず、本ナノ粒子の治療効果が認められた投与量は1,000ppmであったが、低濃度でも同様の感染防御効果が得られるかについて調査するために、本ナノ粒子の投与量別の経口投与による治療効果を調べる試験を実施した。 次に、本ナノ粒子の予防効果を再度調査するために、実験感染試験前の本ナノ粒子投与と全試験日程の本ナノ粒子投与を実施した。最後に、実験感染魚の発症が確認された後に、本ナノ粒子を投与して治療効果を調査した結果、経口投与によって予防効果は認められるものの発症後の治療効果については両濃度区で確認することはできなかった。
|