現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
I:未成熟期(♀ 20ヵ月齢)トラフグに植物性油脂を腹腔内へ投与し2ヵ月間飼育した。(鉱物油)ミネラルオイル、(植物油)ヒマワリ油、パーム油、パーム核油、ココナッツ油、および無処理の計6区(N=3)でTフィードバック回路の活性化を検証したココナッツ油およびパーム核油でT濃度の上昇を確認したが、現在までに卵黄蓄積は起らず早期成熟誘導までには至っていない。中鎖脂肪酸含量の多い植物油は過剰に生体投与した場合、ホルモンバランスを崩す内分泌攪乱作用を持つことが示唆された。この結果は、魚類の生体内では中鎖脂肪酸がホルモン合成のメッセンジャーとしての役割を担っていることを示唆している。現在0歳魚(雌雄)からのココナッツ油およびMCTオイル投与群を継続して飼育しており1歳魚での早期成熟促進効果について解析を行っている。 II 生殖腺切除個体(未成熟期♂/♀ 20-23ヵ月齢、10-12ヵ月齢)を準備後、ココナッツ油を投与しTフィードバック機構に関する生殖腺の役割について解析した。各個体でELISA法による血清T濃度の測定とISHとIHCを併用した組織化学法を用いて、各種下垂体ホルモン遺伝子(gh, cga, tsh-b, fsh-b, lh-b, cyp19a1b)のmRNA分布、共焦点顕微鏡を用いた蛍光強度測定による蛋白質(CYP19, LH)の発現量の解析を行い、Tフィードバック回路の活性化を評価した結果、同年齢・同重量の個体でも雌雄でその反応が異なることが明らかになった。20-23ヶ月齢の卵巣切除個体ではココナッツ油の投与はTの上昇およびLHの合成はなかったが、精巣切除個体ではTの上昇およびLHの合成が確認できた。以上の結果よりココナッツ油による精巣以外の組織でTの合成誘導が示された。一方雌では卵巣がT合成の主要組織であり、成熟開始に重要な役割を担っていると考えられた。
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