研究課題
紅藻スサビノリ葉状体のTU-1株から分離した付着細菌Neptunomonas sp. BPy-1は薬剤処理した葉状体の成長を促進した。スサビノリ培養株には多様な細菌が付着しているが、形態形成誘導以外の機能については不明であった。本研究では、スサビノリ付着細菌によるインドール酢酸(IAA)合成について調べ、次の特徴が明らかになった。八代海から採取した海草アマモの葉からBPy-1類縁菌(Neptunomonas sp.BZm-1)を分離した。BZm-1もスサビノリの成長に対してBPy-1と同様の効果を示した。BPy-1とBZm-1はIAAの前駆物質であるトリプトファンを培地に加えると、栄養条件に関わらず培地中にIAAを分泌した。特に、極度の貧栄養により細胞増殖が抑制された状態でもトリプトファン依存のIAA合成は進行した。これは海水中に生育する植物の付着細菌の特性を反映していると考えられた。スサビノリの葉状体や糸状体から新たに分離した付着細菌はどちらもNeptunomonasとは異なる分類群だが貧栄養条件ではBPy-1と同様のIAA合成様式を示した。このIAA合成様式は細菌種を超えた付着細菌の特性と考えられた。全ゲノムが解読されている5種のNeptunomonas 細菌のIAA合成酵素を検索すると、IPA経路のIpdCとIAM経路のIaaMが欠落し、IaaMとは起源が異なる相同遺伝子に置換されていることが共通する特徴であることが分かった。そこでBPy-1ゲノムの塩基配列を決定し、IAA合成酵素遺伝子の構成を調べたところ、BPy-1も上記の特徴を持つことが明らかになった。本研究ではアマモ付着細菌BZm-1がスサビノリの成長を促進することが示されたが、アマモに対する作用は不明だった。そこで、アマモ無菌培養株の作出を試み、1年間安定して維持できる培養株が分離できた。
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The Plant Journal
巻: 101 ページ: 1318~1330
10.1111/tpj.14592