研究実績の概要 |
初めに、白血球の遊走を制御する免疫分子:CCおよびCXCケモカインの発現リズムの解析を行った。CCケモカイン7種 (CCL13L, 14L, 17L, 18L, 19, 20, 25L) を対象に概日リズムの有無を確認し、発現の頂点位相・最下点位相を確認した。その結果、CCL18L, 19および25Lの発現に概日リズムが認められ、さらに頂点位相および最下点位相は、それぞれZT12およびZT0であった。同時に、CXCケモカイン3種 (CXCL11, 12, 13) について同様の試験を実施したところ、CXCL11および13は、ZT4に頂点位相を、ZT16に最下点位相を示す概日リズムを有することが確認された。続いて、ゲノムデータベースを利用し、リズムを有したCCおよびCXCケモカインの転写調節領域に時計遺伝子応答配列が存在するかを確認した。その結果、時計遺伝子RORが結合するRORE配列が、CCL18L, 19, 25L, およびCXCL11遺伝子の転写調節領域に認められた。また、時計遺伝子Bmal1/Clock1が結合するE-box配列が、CCL25LおよびCXCL11遺伝子の転写調節領域に認められた。このことから、CCおよびCXCケモカインのいくつかは、時計遺伝子によって制御された概日リズムを有することが示唆された。 続いて、TNF-alpha(一昨年度、概日リズムを確認)、CCL18L, 19, 25LおよびCXCL11遺伝子を対象に、異なる時間帯での免疫刺激(細菌の細胞壁構成成分LPSによる刺激)が発現に違いをもたらすのかを検討した。その結果、最下点位相での免疫刺激よりも、頂点位相での免疫刺激の方が、より強い発現増強効果を示すことが全ての対象遺伝子において確認された。したがって、異なる時間帯における免疫刺激は、その後誘導される免疫応答に違いをもたらすことが示唆された。
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